幼馴染みは俺と寝たいらしい(健全な方)①
「ねえ、いっしょにねてもいいかな?」
「………ん?」
涙目+上目遣いでそう訪ねてくるのは、我が
幼馴染みの文月である。
一体何故こうなったのか。
それは今日の放課後に遡る。
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「すごい雨だな…」
今は学校から帰ってきて自分の部屋にいる。
そして当然のように文月もいる。
今は飯も食べ、風呂や歯磨きもしていて、夜
の10時くらいである。
何故ここに文月がいるかというと、文月の両親は共働きで、今日は二人とも出張が重なったらしく家には誰もいないということで家で預かっているということだ。
文月は料理も家事もそつなくこなせるが、万が一のことも考えうちに来ている。
別に今さら珍しいことでもないので変に緊張することもあるまい。
俺の部屋の隣は、元々物置部屋として使っていたが、片付け掃除を定期的にしているので、
そこで文月はいつも寝ている。
さて、少し話が脱線したが、今日はひどい雨である。天気予報によると明日の早朝辺りまで降るとのことでまだやむ気配はない。
むしろ雨脚は強くなっている一方だ。
ピカッ!ドゴーーーーーン!!
「うぉっ!」
「……(ビクッ!)」
びっくりした。どうやら近くで雷が落ちたようだ。停電にならなければいいが。
そんなことを考えていると。
ドゴーーーーーン!!!
「きゃぁっ!」
「?!」
いきなり柔らかい何かが俺に抱き付いてくる。
恐る恐るそちらの方を向くと、弱りきった文月が震えながら俺に抱き付いていた。
ヤバい、何かこうヤバい。
いきなりの出来事に語彙力が、失われてしまった。何かいい香りもするし、控えめな二つのお山さんもこれでもかと押し付けられているし、
全体的に柔らかいしって、何をしてやがる!
煩悩退散と心で念じながら話を切り出す。
「お、おーい文月さ~ん?ちょっと離れてもら
えませんかね?」
「む、無理」
まずい、俺の理性がこれでもかとガリガリ削られている。
こういうときに限ってどうした?!神は俺のことを見放しやがったのか?!
と、そんなことを考えていたが、そういえばあることを思い出す。
「…お前まだ雷苦手なのか?」
「……(コクッ)」
無言で頷く文月。どうやら昔からの雷嫌いは
治っていなかったらしい。
昔は、雷がなくと完全に収まるまで泣いていたり、一人でいられなかったりと結構大変なイメージがあったな。
昔よりは大分良くなったが、怖いものは怖いのだろう。このまま放置しておくわけにもいかないし(主に俺がヤバい)、どうしたものか。
「文月、一緒に部屋まで行ってやるから」
「やだ、こわい」
何だめちゃくちゃ可愛くなってやがる!
恐怖によって幼児退行した、文月とか冗談抜きで、世界最強レベルだろ!
「じゃあどうすんだよ…」
「いっしょにねよ?」
「いやいやいや、無理無理無理!ほら、今少しやんでるから行くぞ!」
「ええ~」
普通に考えてもヤバいだろ!今の状態で一緒に寝たら何をしでかすかわかったもんじゃない。
俺は隣の部屋に文月を連れていき、横に寝かすとすぐに部屋を出た。
出る際にヘタレと言われた気がしたが、多分気のせいだろう。うん気のせいだ。
明日は休みだし、ゆっくりするかと俺も横になろうとしたところで再び、
ドゴーーーーーーーーーン!!!
と、雷が落ちた。
これはやばい。相当近いところに落ちただろう。
そんなのんきなことを考えているといきなり、
廊下から
ドドドドドッ!
やばい、猛烈に嫌な予感がする。
いきなり俺の部屋の扉が開き、またもや何かが
抱き付いてくる。
それもさっきよりおもいっきり。
「うぐっ!」
俺の呻き声を気にせず、一人怯えているのは、
やはり文月だ。
「お、おい文月。自分の部屋に戻れ…」
「む、むり~~!」
よく見ると涙目で今にも泣き出してしまいそうだ。
「そ、そういうわけには……」
「き、きょうだけでいいの」
「けどな……」
俺がいい淀んでいると、
「ねえ、いっしょにねてもいいかな?」
そして、今に至る。
涙目+上目遣いで訪ねられて、断れるほど
俺も人間出来ちゃいなったようだ。
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