第15話「古代の塔の内部」
「誰もいませんね」
塔の中に突入した俺とジン中隊長だったが、塔の中には敵も味方もいなかった。 塔の中は何かしら特殊な魔法なのかは分からないが至る場所に明かりを灯す石のような物が両壁や天井にはめ込められており、昼間並みに明るかった。 そのおかげか、辺りの惨状を直ぐに把握することが出来たが、その様は激しい魔法や精霊術の爪痕と、味方や敵の死体、壊れた瓦礫
がれき
等で辺りは地獄絵図と化していた。
「妙だな」
首を傾げながらジン中隊長は更に言葉を続けた。
「ここに散らばっている賊の死体、その全てがこの魔の森に住む魔獣以外に存在してないぞ」
確かに妙だ。 敵襲と誰かが叫んだ瞬間、塔の中では激しい魔法や精霊術の衝突が見えた。 しかし、ここにある賊の死体は全てが魔法を使えない下位モンスターだからだ。
「それに、この程度の下位モンスター共に暗黒精霊術師隊に死者が出るなんてありえねぇ。 注意しろよ、賊の中には上位魔法を使える使い手がいるはずだからな」
「はい!」
しばらく進むと、二階へと続く階段が見えてきた。 この辺りまで来ると戦闘の爪痕は消えており、壁や階段にも壊れた跡はなかった。
階段を上り二階フロアへと出て、更に上への階段を目指し俺達は歩き続けた。 途中、賊の襲撃に備えていたが、不思議なくらいに何も起こることはなかった。 そして、しばらく歩き続けた先に3階へと上がる階段を見つけた時だった。
「嵌められたな」
ジン中隊長は剣を抜刀して舌打ちをうった。 直ぐに俺もその意味が理解できたが、既に時遅しな状況は明らかだった。
3階の階段からゆっくりとこちらへ緑色の肌をむき出しにしている腰巻姿の巨体の化物が降りてくる姿が見えた。 化物はその巨体の右手に見合う大きなこん棒を掴んでいた。
そして、さっきまで俺達が通ってきた1本道の後方の廊下からは、どこから沸いてきたのかマジックスケルトン3体の姿が確認できた。
「挟み撃ちとはな、にしてもよ、後ろのマジックスケルトン達はどこから急に沸きやがったんだよ!」
「ちょっと、これはキツイですよね?」
「敵を倒すというよりも、お前を守れるかって話なら、ちょいとマズいな。 ユウ、お前は階段から降りてくるジャイアントゴブリンと戦え! 魔法や特殊スキルを持たない、馬鹿力だけしか能にない単細胞なモンスターだ。 俺がマジックスケルトンを片付けるまで、なんとかお前自身の命を守りきれよ!」
「分かりました! なんとか食い止めてみます」
だが、俺の本心は違った。
例え相手が誰であろうが俺はもう迷わない。 食い止めるのではなく、俺は自分よりも数倍は体が大きい目の前のジャイアントゴブリンを倒す気だ。
不思議とやはり恐怖心はなかった。
「いける!」
自分を奮い立たせる為にも俺は言葉を吐き出してから、目の前のジャイアントゴブリンに向かって階段を駆け上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます