第14話「戦況」

なんとかバックル5匹を倒した俺は周りの状況を確認する為に周辺を見まわしていた。


 古代の塔

エンシェントタワー

入り口付近にいたはずが、あの時、暗黒騎士達に護衛されていた中で何者かの魔法攻撃によって吹き飛ばされた俺は気が付けば塔の入り口付近から300メートル程飛ばされていたらしい。


 塔の入り口付近では相変わらずに拳闘士隊、闇魔導士隊、暗黒騎士隊が多くのバックル達と戦闘中であったが、無数とも思えたバックルの数は大幅に減少し、戦況はこちらが完全に有利に見えた。 そして、辺りには無数のバックルの死骸、拳闘士隊と闇魔導士隊の隊員達の死体も散見された。



 俺は塔に向かって走り出した。


 そして、塔の入り口近くまで辿り着いた所で、塔の内部の状況も確認できたが、こちらは酷い有様だった。 無数の暗黒精霊術師隊の死体が転がっており、その数は塔の外での味方達の死体の比ではなかったように見えた。


 「大丈夫か!?」


 前方からジン中隊長が俺を見つけて走りながら手をあげていた姿をみて俺は少し安堵できた。


 「はい、ジン中隊長もご無事でなによりです。 戦況の方はどうなっているのですか??」


 「酷いな。 先陣の暗黒精霊術師隊は塔に入って直ぐに賊の奇襲と罠で半数以上の者が死んだらしい。ミホーク隊長殿が直ぐに立て直して奇襲を仕掛けた賊を殲滅したらしいがな。」


 「そうですか、他の暗黒騎士の方は?」


 「それなら心配ない。 怪我して戦えない隊員達には瞬間石

テレポーストーン

で城へと帰還させたよ。 帰還したら援軍を出せとも命じたしな。 現在、残ってる騎士は俺と半分というところだな。 あの時、俺達は円形の陣形を組みバックル達と戦っていたろ? だが、戦闘中に森の中で身を潜んでいた賊に魔法攻撃を食らって俺達は吹き飛ばされ陣形は崩れダメージをくらったが、俺は直ぐに森に潜んでた賊を見つけ戦闘になったんだが相手を見てビックリしたぜ」


 その時、数匹のバックルがこちらへと向かってきたが、軽々とジン中隊長は一掃した。 そして、言葉を続けた。


 「なんとよ、相手はマジックスケルトンだったんだよ。 下位アンデッドがあんな行動出来るはずないからな、どこかに奴らを操ってる魔獣使い(テイマー)がいるしか考えつかないぜ。 ただ、下位アンデッドとはいえ、ただの魔獣使い(テイマー)がアンデッドを操れるとは思えないのが気になるがな」


 アンデッドと聞いて、俺は街の礼拝堂で襲ってきた人間のアンデットの事を思い出した。どこか、今回の事件と繋がりがあるような俺はそんな気がした。


 「ま、とりあえずはお前が生きていてくれて良かったぜ。 俺達、暗黒騎士隊の今回の仕事はお前の護衛だからな!」


 「正直、死ぬところでしたが、以前に魔王様から頂いたこのペンダントのおかげで助かりました。 ジン中隊長、俺は魔王様をお助けしたいのです。だから‥‥‥」


 言葉を続けようとした瞬間に腹に軽い痛みが走った。 ジン中隊長が俺の腹に軽く一発入れたのは直ぐに分かった。


 「よーし、それで倒れないならまだお前は戦えるな。」


 「はい、ですので」


 「分かってるさ、お前はすぐにでも塔の中に行きたいんだろ?」


 「はい」


 「かなり危険だとは思うが、魔王様を助けたい気持ちは同じだからな。 俺がお前を護衛してやるよ、最後までな! だから、お前は死なずに生きて魔王様を救出することだけを考えろ」


 「分かりました。 護衛宜しくお願い致します。 本当にありがとうございます」


 俺は心から感謝し頭を下げた。 ジン中隊長は俺の頭をポンッと叩いてから言った。


 「魔王様を救出した後は、約束通り街に行って酒を奢れよ!」


 「必ず!」


 そして、俺とジン中隊長は塔の中へ突入するべく走り出した。

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