第12話「白い閃光」
「敵襲!敵襲!敵襲!!」
誰かが叫んだ。
その僅か数分後には古代の塔
エンシェントタワー
の入り口、そして入り口付近にいた俺達は戦闘状態にはいっていた。
塔の入り口では暗黒精霊術師隊と塔の中で待ち受けていた者達同士で激しい魔法攻撃をしている姿が見えた。 そして、入り口付近では拳闘士隊と闇魔導士隊が共同しながら100匹はいるであろう黒色の狼の姿をし鋭利な角が生えたとバックルと呼ばれるモンスター達と戦闘をしている。
俺と護衛役の暗黒騎士団10名も同様に無数のバックルに囲まれていた。
「まずいな、完全に囲まれてやがる。 それに数が多すぎるし、モンスター達の統率も出来ている。 近くに魔獣使い(テイマー)がいる可能性があるな」
そう言いながらジン中隊長は抜いた剣で、襲ってくるバックルを一刀両断していた。 残りの暗黒騎士も強者揃いで、バックルを次々と切り裂いていた。
「おい、ユウ! 俺の射程圏内から離れるなよ。」
俺は突然の出来事と、無数にいるバックル達の姿を見て膝がガクガクと震えていた。 借りた魔剣を抜刀することも出来ずにいた。
ここに来る前に、俺は魔王様を助けてみせるなんて言っときながら、今は自分の命欲しさに逃げ出したいとさえ思ってしまった。
「‥‥‥ちくしょう」
誰にも聞こえない、自分でさえ聞き取れない小さな声で俺は呟いた。
恐怖心が止まらない、結局のところ俺は自分可愛さを優先にして好きなあの方を自分の命より下にみているのだろうか?
ジン中隊長や他の暗黒騎士が俺を守るように円形した隊形で無数のバックル達と戦っている中、俺はただただ何も出来ずにいた。
次の瞬間、急に辺りに眩い閃光が俺と暗黒騎士達を包み込んだ、そして同時に激しい爆音と共に暗黒騎士達も俺も宙を浮いた。
気が遠くなりそうな意識の中、腰と背中に激しい激痛が走った。突然の閃光と爆音により宙へ浮いた俺の体が地面へと落ちた衝撃の痛みだった。
俺を護衛していたジン中隊長、暗黒騎士達も同様に吹き飛ばされたのだろう。 俺の周りには誰もいなかった、バックル5匹を除いては。
倒れている俺の方向へ徐々に近寄ってくるバックル達に死の恐怖は先程までとは比較にならならい程に高まり、そのせいか体の激痛感はマヒしているように感じた。
「死ぬのか俺は? 嫌だ、嫌だ、嫌だ、まだ死にたくない。 たす、助けて」
人の言葉なんて聞くかも分からないバックル達に向かっての命乞いなのか、それとも誰でもいいから助けて欲しいという願いなのかは分からないが、立ち上がることすら出来ない俺は今出せる全力の声を出した。
しかし、誰もが無数にいるバックルと戦闘中なのか誰も助けにはこない。
完全に俺を捕捉射程にとらえたバックルが俺に飛び掛かった姿がスローモーションのように見えた。
と、その時――――
俺が常日頃から決して外すことのない首回りにつけていたペンダントが光りだしながら浮遊し、そして眩い閃光を放った。
目の前には何も見えない白い閃光の中、それはまるで全てが雪景色の白い風景に見えた。
その中で、俺は半年前の出来事を思い出していた。
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