第9話「事件発生」

「起きて! 起きて!! ユウーー!」


 深い眠りの中、悲鳴的な叫び声が響き渡り、夢から俺を現実へと戻した。 目を覚めすと、そこには俺の肩を揺らしながら必死に俺を起こそうとするメイドのルナの顔が見えた。 ルナはメイドのレナさんの妹であり、レナさんとは双子の姉妹である。 真面目な姉であるレナさんに比べて、時々仕事をサボったり調理室でつまみ食いをしたりと怠慢なルナだが、根は素直で愛嬌があり不思議と周りから人気がある、金髪ショートカットで魔族の可愛いメイドさんだ。


「ん~、どうしたの? こんな夜中に」


 まだ寝ぼけている俺はなんでこんな時間にルナは俺を起こしにきたのだろう、いや、俺が寝坊した時にも今まで一度も起こしにきたことはない。 段々と俺の頭は覚醒してきて、目の前のルナの尋常じゃない慌てぶりの表情をみて何か大変なことがあったのだろうと察した。


 「魔王様が、エリス様が‥‥‥」


 その言葉を聞いた瞬間、俺は咄嗟にベッドから起き上がりルナの両肩を掴んで俺は声を荒げていた。


 「魔王様が、魔王様がどうした!?」


 ルナは半泣きになりながら小さく呟いた。


 「何者かにさらわれたわ」


 その言葉を聞いた俺はルナを押さえつけていた両手を放して愕然とした。 そんな俺に対して、ルナは言葉を続けた。


 「私が城内の見回りをしている時だったわ。魔王様のお部屋から激しい物音がしたので、お声をかけたのでけど、反応はなくて。 そしたら窓ガラスが割れる音が聞こえたので、急いでお部屋へと入ったら、そこに魔王様のお姿はなく室内は酷くあれてたの」


 俺はただ黙ってルナの言葉を聞くことしか出来なかった。 それを察してか、ルナは言葉を続けた。


「今、3武将の方々と上級魔族兵達、各隊の副長等が会議室に続々集まっているわ。 だから、魔王様の側近である執事のユウも急いで! ユウにしか出来ないことだってあるでしょ!? 私は会議にすら参加出来ないのよ!」


 ルナは悔しそうに俺に喝を入れた。 そうだ、俺に出来ることをしなければ、魔王様を心配しているルナや他の配下達の為にも。


「だから、お願い! 魔王様を無事に取り返してきて!」


 俺は立ち上がり、執事の服へと着替えると、座り込んで憔悴してしまっているルナの頭をポンっと叩いて彼女に伝えた。


 「ああ、任してとけって! 必ず魔王様は取り返してくるから。 だから、ルナには朝食の準備は任せたよ、調理場の連中と一緒に魔王様の好物を沢山作っておいて!」


 そう言って俺は自室から出ると、急いで会議室へと走った。


 「必ず! 俺はあなた様を救いに行きます! だって、俺は魔王様の執事ですから!」

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