第24話 洞窟の亜種

「では、行ってきます」


「「行ってらっしゃい」」

「お土産期待しとく」

「ご無事でっ」

「「早く帰って来てくださいねっ」

みんなから見送られて、手を振って答えた僕

ジェシカめっ。何がお土産だ、遊びに行くんじゃねーんだぞ?


「ご主人様、では…失礼します」

ひょいっとお姫様抱っこされたよ僕

「洞窟の場所イマイチ分からないけど、エリザなら半日もあれば着くよね?」

長時間のお姫様抱っこはしんどいよ?


「だいたい2時間ぐらいで山岳地帯に入れるでしょうから…3時間もあれば余裕かと。」

あ、ほんと?そんなに近いんだ

なら寝て起きたらつ

くっ

…くっはっ


速いっ速い速い速いっ!!


「ぎゃぁぁぁぁーっ?!」



◇◇◇


「ご主人様、山岳地帯に着きましたよ。大丈夫ですか?」

「おえぇぇぇっ…っ」

ただ今リバース中の僕

確かに長時間は嫌だと思ったが…早過ぎるのもダメだと学んだよ

「み、水を…」

エリザから水筒を受け取り、口を濯いでから二口飲んだ


「…ふー。2時間もかかってないよね?」

「はい。森の中央をつっきった訳ではないですから」

確かに山岳地帯に来るのに、中央を通る必要はないね。でも、おかげでスピードが上がり、吐くはめになったが…。


「じゃ、知り合いの子まで案内して」

「ご主人様っ?!」

「え?エリザの知り合いでしょ?違うの?」

びっくりするエリザにつっこむ僕


「確かに知り合いといえば、知り合いですが…。私はともかく、向こうは友好的ではないかもしれませんよ?」

知り合いで友好的じゃない?

…それって、敵じゃん?!

「大丈夫なのソレ?」

不安になったが、2人で洞窟を目指して歩いた

……

「うひゃぁ?!」

"ドスっ"

「もう大丈夫ですよご主人様」

「ありがと…」

腰を抜かした僕を抱っこするエリザ

歩き出した途端にコレだ。今ので2桁突入か

モンスターとの遭遇率が半端ない。

…にしても、山岳地帯と聞いていたが、思っていた場所と違うなぁ…

岩肌があって…険しいまでは思った通りだけど。


「もっと岩場かと思ってたよ僕」

「山岳地帯といっても、森に隣接してますから。森の一部から山岳地帯ですよ?」

「そうなの?」

「はい。ご主人様が仰られた岩場というのは、もっと登った上の方です」

2人は遠くに見える山頂を眺めた


「ちょ?!あんな所まで行くの僕たち?」

出る前に1時間って言ってたよね?

「流石に山頂はないです。洞窟になりません」

「あ、そうだよね」

山頂から洞窟…。それじゃ、縦穴…落とし穴だよね


「じゃ、サクサクいきますか」

張り切って洞窟を目指すよ僕

……

「あ、足がぁぁぁぁ…。エリザ抱っこして」

頑張った15分…。僕の足は痙攣を起こした

…抱っこしてもらったよ僕


「ご主人様、張り切り過ぎですよ?山はゆっくり登るものです」

た、確かに…。

前の世界でも7000級とか、8000級の登山で、山頂アタックは、たかだか600〜700メートルの移動に1日を費やすのだ。

雪山とか、難易度が高過ぎる場所は…移動距離はそれ以下になる

エリザの背中におぶさる僕


「ごめんエリザ、負担を…

かっ

…け?

……

「おえぇぇぇっ!」

高い山に登る時、一気に登ったら高山病になるんじゃなかったかな?

「あ、頭がいてぇ…」

「着きましたよ。アレがそうです」

あ?着いた??

…アレが洞窟か。なんて入るのを躊躇わせる嫌な入り口だこと…

「ねぇ…。こんなとこまで探索したクソバカな冒険者って、どんなヤツらかな?」

僕は探索し過ぎだろっ?と思ったね


「冒険者はほとんどクソバカですよ? 自分たちの力量も知らずに向かって来るんですから…」

「それは…そうかもね。でも、中には自分たち…己を知る冒険者もいるんじゃない?」

いるじゃないの。シルバーブレットとか…。たぶん僕の感じでは、アリスやテレサは元だけど…それにダンとか、そんな雰囲気あるよ


「それはどうでしょうか…。相手を知らずに獲物に飛びつく…三流以下ですね。冒険者たちは皆、愚かな人間です」

……

「ほう…。相手を知らずに向かってくる?

貴様、よくそれを言えたな? ……だ


?!

「ちっ、違いますっ!違うんですっ!!

私は決してそのようなつもりで言ったのではなくっ、あくまで、、あくまでもモンスターから見た一般的な考え方を言っただけなのですっ!!」

急に態度が変わり、ビクビクし出すエリザ

エリザの足元には水溜りが出来ていた

うん。ノーパンで良かったねエリザ


「ほら。早く拭かないと…修道服についちゃうよ?」

「は、はいっ!申し訳ございませんっ」

クルクルクルーっと、前を捲るエリザ

あ、スリットが入ってるからか。そりゃ便利だね


「はい、足を広げて…」

「ふ、拭いてくださるのですか?」

「エリザは両手塞がってるじゃない?僕が拭くよ」

エリザはいつものイッキに戻ってるコトに安心し、許されたと感じた


「お、お願いしましゅ…」


……

「あーんっ」

……

「ダメぇぇぇーっ」

んー。拭いていたら…やっちゃった。

ま、仕方ないよね?

だってね…男の子だも…

『ブモーーっ!!』

あら?牛さんだ…


「ちょっとエリザっ!アレがその亜種?!」

ぐったりしているエリザに言う

「ひゃい?…ですぅ」

だめだ! 最強戦力かつ、唯一の戦力が役に立ちそうにないっ

ドンドンと近づいて来る

ちか…

…づ…

…いて。

「でっか…」

見上げて見たよ僕

うん。コイツは3メートルあるな…

『ブモーーっ!ブモーーっ!!』

何言ってるのかさっぱり分からん

……

黒い、とにかく黒い…

体も毛も真っ黒だ。頭に生えている、二本の角だけが赤いな


「キミ、エリザと知り合いな

あ〜

れ〜っ


亜種に連れ去られたよ僕


「ご主人様ぁぁ…私、立てませんですぅ」



◇◇◇


「ねぇ、キミ。降ろしてくれないかな?」

牛さんの肩に乗っけられてる僕

『ブモーーっ?!』

んー…。何かをさせようとしている?

良く分からんけど、このまま奥に連れて行ってもらおう

……

へぇ…。洞窟の中なのに、随分と明るいな。

それにここはかなり空間が広いぞ。アリの巣みたいな感じかな


『ブモーーっ!』

「どした?」

牛さんが横穴の一つに向かって咆える


『プゥー』

あらかわいい。僕より小さい牛さんが歩いて出てきた

妹さんかな?でも、色が全然違うよね

『プゥ、プゥ』

「ん?なあに?」

僕は近づいて声をかけた

?!

「キミ…顔が…。」

小さな牛さんの顔が、半分溶けていた

髪の毛で隠れた?隠していた?から、近づいて見ないと気付かなかった


「痛かったら言ってね。少し触るよ?」

髪の毛をかき分け、顔全体を見る…

…魔法?…いや、特殊な武器か? 薬品の類いではないだろう

だとすると…この洞窟の情報を、ギルドに流したヤツが絡んでいるかもしれないね

『ブモーーっ!!』

『プゥー』

小さな牛さんの、まだ使えている方の目から涙が溢れた

……

「大丈夫だ、俺が治そう。本来なら治癒は****の領域ではあるが…。俺が出来んということはない。まぁ、崩壊して****に戻ることもなかろう…」

俺は小さな子の顔に手をかざす

『****が命ず、癒せ』



◇◇◇



私は浮かれてしまった。ご主人様の機嫌が戻られたところで、やめておけばっ。

このような事にならなかったはず…

あれから1時間ぐらい経ったか?

私の失態だ。ご主人様に万が一何かあれば、あのお方になんと報告すれば良いのか…私には思いつかない。

急がねばっ!

エリザは洞窟内に急いだ

……

「はい?ご主人様??」

洞窟の中の広い空間で、女が2人ご主人様を挟む形でスヤスヤ寝ている…

ご主人様を連れて行ったミノタウロス…良くはない。が、いないのでまぁよしとする

女が2人ご主人様と…悔しいが見逃そう。

だけど…


「なんでみなさん、全裸なんですかっ?!」


……

「えー、えーと。どうなの?」

「アタシは知らないよ?」

「あたしも…。」

「だって。エリザ、誰も知らんってさ」

……

「ごーしゅーじーんー、様っ?!

知らんってさ、じゃないでしょう…。

私、私心配で…ふぇぇぇんっ…」

話の途中から号泣したエリザ


「ごめん、ごめんって。エリザ、紹介するね。

ミノタウロスのお姉さんと、妹さんです」

「クイーン…いま、エリザって呼ばれてるのか?久しぶりだな」

?!

「あ、貴女やっぱり…」

「ああ、そうだ。しかし、ご主人様のモノはすげーなっ」

「当たり前ですぅ。私のご主人様…?ん?貴女いま、おかしな言葉を言いませんでしたか?」

「ご主人様がどーかしたのか?それとも、モノはすげーな、か?」

「な、な、なんで貴女がっ?!ちょっとご主人…さ、ま?」


「イッキ様っ、あたしの顔キレイ?」

「顔も体もキレイだよーん」

「わーい、うれしいっ」

「げへへっ、柔らかいなぁ最高だねっ」


「「……」」

無言の2人…


「「…うんっ」」

おや?仲間意識が出来たか?共にお互いをみてうなずく


「「ご主人様〜っ❤️」」



イッキはこの後、1人3戦挑まれた


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