第23話 追撃のゼロ

「バレット様…。もう10日経ちますが、イッキ様を探さなくて大丈夫でしょうか?」

騎士がマズくないの?な顔をして話を切り出した

「大丈夫って。事件や事故に巻き込まれたら、アタシたちの耳にもはいるっしょ?」


クッキーを口にしながら、本を読むバレット

今見ているのは "王都のお薦めスイーツ" だ

「それよりっ、今度コレを食べに行くよっ」


「「…はあ…」」



◇◇◇



処刑から1週間経った

ギルドも落ち着きを取り戻している


「キャァーっ?!」

「どーしたっ?!」

「モ、モニカのパンツ…盗られたのっ」

「「またあの小僧かっ!」」

……

いろいろ問題があるようだ


〜〜〜


「で、今度は何色を盗ったんだ小僧?」

正座させられている僕


「色…色ねえ…。しいて言えば空気色?」

「空気色? テメーまた、訳のわからんことを…」

「いや、他に例えようが…中身がスケ…


「きゃーっ、ストップ!ダメーっ!!」

モニカは慌ててイッキを背後から抱き上げた

「ギルマス、小僧に甘いですよ?」

「いい。コレは良いのよ」

と言いながら部屋に連れて行った


……

「イッキ様…。モニカのパンツ、今度は何に使われたのでしょうか?」

頬を染めてモニカが問う


「様はやめてよ。…透明に近かったから、被って玉ねぎを切った?だって、涙がでちゃうよね、アレ」

「か、被った…?モニカのパンツ…を?」

茹で蛸になっていくモニカ

この世界にはタコがいるのだろうか? タコ焼き食べたくなったなぁ…と、イッキは思う


「ね、君たちさ…。タコって言う生き物?食べ物知らないかな?」

モニカの側近…2人の女性に聞く

互いに顔を見合わせて、何か話をする


この2人、行方不明になった元冒険者だ。イッキは彼女たちをギルドで働くように…働けるように手を回した。

背の高い赤毛の女性は、アリス

背が低い青毛の女性が、テレサ

2人は姉妹。母親が違うらしいが。

行方不明になった冒険者、17人。うち、12人は確実に亡くなった。消息不明が3人…おそらく彼女たちも…。だが、希望はある。

見つけることが出来たなら、手厚い保護をしようと思っていた


「「すみません、知らないです」」

「うをっ?!」

突然両耳から入ってきた

2人に挟まれている僕。ふむ…柔らかいな。

「ねぇ、アリスにテレサ…髪の毛の色と同じで、やっぱり下も?」

気になるじゃん、僕じゃなくてもね?


「「ごらんになられます?」」

「なられますー」

同じタイミングでスカートを下げ…

「貴女達っ、ダメーっ!!」

惜しいところでモニカの邪魔が入った


「なんだよー。もうちょっとだったのに」

「何がでしょうか?ご主人様」

?!

「なんでしょう?…そんな事いいましたっけ僕?」

なんで背後に居るんだよっ?! 昨夜あれだけフルボッコにしたのにっ。

元気じゃねーか…ん?

「エリザ、髪と肌に艶が出た?」

エリザの顔が、ぱぁーっと明るくなる

「わ、分かりますかご主人様…。ご主人様の

…その、アレ?私にとても合うようで…」

モジモジするエリザ


"ゴクリっ"


ちょっと、誰よ?いま生唾飲んだの…

恥ずかしいよ?聞こえまくり…

あら…3人とも顔が赤い。

「全員かっ?!」


……

「で、僕を部屋まで連れて来た、本当の理由はなあに?」

不自然だったから聞いてみたよ僕


「さすがですね。実は…山岳地帯に洞窟を発見しまして…」

「森を抜けたところの?」

「はい。その洞窟にミノタウロス・亜種と思わしきモンスターがいると、報告が。」

ミノタウロス?…っていったら、牛人タイプのモンスターか…


「エリザ知ってる?」

「いえ…私は…」

ん?何か知ってるみたいだな…

「でもさ、僕たちじゃなくてもねいいよね?」

モニカの顔が渋る

「それが…今、王都にランクS以上のパーティーがいないのです」

「なんでよ?王都ギルドっていったら、1番デカい…本店でしょ?」

モニカの顔が泣きそうになる


「前ギルマスのせいで、Sランク以上はもとより、上位パーティーの王都離れがありまして…。前々からあったのですが、今回ダメ押しで一気に。

かろうじて残ってくれたパーティーも、ロマニア領へ救援に向かっています」

前ギルマス…アイツか。アイツのせいか…

?!

「ちょっと待った!ロマニア領に救援?!」

なんだそれ?僕のところじゃないかっ


「はいっ、ロマニアに救援を求められたから遠征してますよ?上位パーティーが」

な、なんだと?!

「何?何が出たんだっ?!」

慌てたよ僕


「オークです」

「………オーク?」

「はい。オークです」

……

エリザを見る。顔を逸らすエリザ…

「だいたい分かった。強い個体が居なければ、かなりの時間もつだろう…。

先に洞窟の牛を攻略しよう。モニカ、食料と日用品の準備をよろしく」



ギルマスの部屋を出て、ロビーに戻ったよ

……

「なんだあの小僧っ!すげー良い女連れてるじゃねーか」

「ガキには勿体ないな。おぃ、女を俺らのパーティーに入れようぜ」

………ボソボソ

……ヒソヒソ

「ばか!止めろお前たちっ」

「あぁ、自分たちから関わるなっ!」


「あーん?なんだお前ら。別にいーじゃねーか…」

「そうだ。パーティー内の話だから、関係ないだろお前たちには?」


「違うんだ。…アレはゼロ。ゼロなんだっ」

?!

「「まさかっ?!」」

「そのまさか…さ。関わってしまったら…」

「あ、危ねぇ…。すまん助かった」

「あぁ…。知らなかったで済まなくなる所だった…。ありがとう」

「いや、俺も知り合いから聞いて…助けられた口さ。お互い様だろ」

口論まで発展間近だった冒険者たちが、1人の少年を一斉に見る


「「あれが、"追撃のゼロ" か…」」



(聞こえてますよ。もうバッチリと。

追撃のゼロですか…。二つ名にしては…カッコいいよね。

誰が付けてくれたんだろう。ありがたいね)




「でもなんで追撃でゼロなんだ?」

「あぁ。でも先ず、恐ろしいのは…あの綺麗なねーちゃんだ。"ダルマ" 見ただろ?」

「あぁ…。前統括だろ?気に食わない奴だったな」

「あんな状態にしたのは、あのねーちゃんだよ」

「「マジかっ?!」」

「で…ダルマになった前統括に、しょんべんを、皆の前で笑いながらかけたのが…」

「「ひ、ひでえな…」」

「蹴りも入れたが、自分の足を痛めたらしい…。攻撃力はないな」

「相手にダメージないということか…」

……

「「あぁ、それで追撃のゼロなのか…」」

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