異世界 少年期
第7話 5年経ったよ
「イッキーっ、兄ちゃんとやらないか?」
朝一番から、危険な香りがする言葉を放ってくる。12才になった兄はムキムキマッチョになっていた…
僕に見せつけるかのように、上半身が裸だ。
「やらねーよ」
もちろんアッチではない。剣術の手合わせだ。それは分かっている
「なんでだよっ?! どっか具合でも悪りーんか?」
「5年間一度もしたことないよね僕っ」
手合わせどころか、剣を振るったことすらない
「ん?そういえば…そんな気もするな」
兄は、剣の腕は確かに上達したかもしれない…が、反比例して頭の方が残念なことになっていた。
「兄さん、なんでまた思い出したかのように言ったのさ?」
そう、そこが知りたいよ僕
「あー、ほら、アレだよア・レっ」
「あれ? なんかのイベ??」
「イベ?…あぁ、イベントか。 でも、ま、イベントっつーたら、イベントだな」
えー?のんびりしたいのに…まさか強制イベントじゃないだろうね? 僕やだよー?
と、兄弟が話をしていると…
「イッキ様、ロベルト様。お見えになられました」
爺やが現れた
「誰か来たの?」
「はい。イーシスの領主一行様、お見えです」
うわぁぁ…めんどくさそうや。丸投げしよう
「兄さんっ。任せた!」
僕は全力で走り出したよ。逃げるが勝ちさ
「ほい、待った」
あっさり捕まる僕
「兄さん、離してもらえないかな?」
「離したら逃げちゃうだろ、お前」
ま、そうだね。
「で、爺よ。やはり来られてるのか?」
「もちろんですとも。随分と可愛らしくなっておられますよ」
僕を除け者にして会話を進める2人
「ねーねー。なんのこと?」
「イッキ様はおそらく覚えてないものと…」
「爺、俺から話す。…もう5年とちょっと前だったかな…。イーシスの領主が、ウチに来たのは。その時、領主の娘が一緒にいて…とっても可愛かったもんさ」
ふーん。で、その子が来てるから兄さんは機嫌が良いと…
「ふむ。その子何才?」
「お?イッキがライバルか。シスは譲らんぞ?」
「僕は何才かって聞いたよ脳筋」
「んー、あれから5年だから…
…えーと、10才か…な?」
「おせーよっ!両手の指で足りる計算だよねっ?! …ん?5歳の時に可愛いと…?
テメー、ロリかっ?馬鹿野郎!」
「ちょ、イッキ。違うってば」
「爺やも何か言ってやって!」
僕と兄さんが言い合っていると
「あらあら。兄弟喧嘩はいけませんよ?」
と僕たち以外の声がした
喧嘩じゃねーし。馬鹿の教育だし?
大事な教育中に横から口を挟むのは誰ね?と、声がした方をみる僕
そこには1人の少女がいた
「お久しぶりです。ロベルト様」
「あ、あ、あひさしぶり…」
かわいい少女だった。兄が吃るのも分からんではないが…
「兄さん、シャキッとしてください。あなたは次期ロマニアの領主ですよ?」
僕は兄を嗜めた
「だってさぁ…こんなに可愛らしくなったんだよ?ドキドキするよね?」
兄が赤くなってモジモジする…
気持ち悪いですよお兄様。
「ロベルトのロは、ロリのロですかっ?!
…はぁ、情けない…。
シス様ようこそロマニアへ。兄、ロリベルトに代わって歓迎いたします」
「ロリベルトって何?! 俺ロベルトだよ、イッキ? ねぇ、ねぇってば」
馬鹿が騒ぐ。うるせーよ
「ところでイッキ様は、わたくしのこと覚えておられますか?」
「んにゃ?知らねーよ」
ハッキリ言う僕。覚えてないものは仕方ないよね?
「ひ、酷いですわっ…覚えてらっしゃらないと?」
「そだねー。覚えてないよ」
「わたくしと2人で国を興すとおっしゃったではないですかっ!」
目に涙を溜めて、とんでもないことを言う
「ちょっと待てい! アンタ、3歳前のガキにそんな事言わせたんかっ?!」
驚き、声が大きくなる
「イッキ…いつの間にっ?! 兄を除け者にして、2人でイチャつくとはっ」
「脳筋、ちょっと黙っとけっ!」
僕は焦る。そんな面倒臭いイベントは回避せねば…と。
「やぁ、君たち久しぶりだね。…シス、お前の姿が見えないと思ったが…ココに居たとはね」
ダンディーなおじ様が現れた
「イーシス様、お久しぶりにございます」
爺やが恭しく頭を下げる
「お父様…イッキ様ったら酷いんですよ?」
父親に助けを求めるシス
「イッキ君…ウチのシスを泣かしたのかい?」
おっと…目が怖いですよ?
下手なこと言ったら殴られそうだよ…
「すみません…イーシス様。うちの兄がシス様を泣かせたみたいで…。」
?!
「な、なにをイッキ言って…
"ボカっ"
兄はそれ以上何も話せなくなった。
あ、危なっ!まさか、グーパンが出るとはっ
僕がもらってたら、大変なことになってるよっ
「なにを騒いでいる。騒々しい」
そこへパパンがやってきた
「おぉ、ロマニア殿。久しいな」
「おじ様、お久しゅうございます」
「誠に久しぶりだな、イーシス殿。それにシス嬢も綺麗になった」
「まぁ、お上手ですこと」
「いやいや、嘘ではないぞ」
「シスよ、ロマニア殿をあまり困らせるでない」
和やかに会話がなされる
「で、そこで気絶しているロベルトは?」
「ロマニア殿には申し訳なかったが、シスを泣かせたので殴りましたよ」
「なんとっ、ロベルトがシス嬢をかっ」
パパンが驚く
「うぬぬ…小奴め。女性を泣かすとは…」
「それに引き換え、イッキ君は立派ですね。彼なら、ウチのシスを娶らせても良い…
どうですかな、ロマニア殿?」
………
……
「むう…いや、それは…しかし…。
イッキよ、シス嬢に我が家を案内して差し上げなさい」
お?とりあえず不穏な空気の、この場所から逃げれるんだね?
「パパン、任せてよ」
「イッキ君、頼みますね」
逃げるようにしてこの場所から出ようとする
「なにモタモタしてるの?早く行くよっ」
「きゃっ?!」
モタモタするシスの手を握って、2人は部屋を後にした
「ほぅ。イッキ君は行動力もありますな。頼もしい限りですね」
「………。」
「おや?どうされましたロマニア殿?」
だんまりするロマニアに尋ねるイーシス
「爺、爺よっ」
「はっ。お呼びでございますか?」
部屋の隅に控えていた爺が呼ばれた
「イーシス殿に、あの事を…」
「よ、よろしいので?!」
「あぁ…構わん。」
「あのこと…?」
イーシスは何のことだろうか…と、これから語られるのを待った
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