第6話 幕間
その頃、元の世界では…
「イッキ…あなた私を嫁にするって言ったじゃない…指輪だってしてるのよっ、ぅぅぅっ」
彩香が号泣する。左手に赤い宝石の付いた指輪が光る
「「「ご主人様っ。私たちを捨てたんですかっ?!帰ってきて下さいっ」」」
猫達は棺に寄り添うようにして、ご主人様に始めて文句を言った
「ダーリン、葵寂しいよ…」
「葵ちゃん…。泣かないで…私も我慢が出来なくなるよ…」
「み、翠ちゃぁぁん」
2人はお互いを励まし合い…共に泣いた
「旦那様…トラックを運転してた愚か者は、そちらに送りましたので…如何様にもなさってくださいませ…」
青の宝石を輝かせる指輪を持つ彼女は、怒りにより"つい"殺人を仄めかす言葉を放った
「一樹っ、あなたとの神社の思い出、忘れないわっ。だけど…一樹っ…」
濃いイエローの指輪の持ち主は、思い出を語る。この指輪も2人で一緒に店で購入した、いい思い出だ
「一樹くんが、壁って言った私の胸…あれから少し大きくなったんだよ? ねぇ…また触ってよっ」
壁、壁と言われていた彼女は、自分の胸を揉んでアピールする。人前だからといって、恥ずかしさなど微塵もなかった
「アニキーっ!! 嘘だろ?また俺をからかってるんだよな?! 嘘って言ってくれよぅアニキ…」
舎弟は号泣して鼻水も垂らす。
始め聞かされた時は、一樹のドッキリかと思っていた自分を悔やんだ
「あなたからの赤い首輪…大切にしますから…」
「私も…首輪を大切にするわっ」
2匹のペット達は、自分の首輪に触れてご主人様を忍ぶ
「一樹、先生な…お前は嫌いじゃなかったぞ」
いつも言い合いをした懐かしい思い出。宮本はなんだかんだと言いつつも、一樹を気に入っていたのだ
………
……
"凛子先生…おかしいと思いませんか?"
(あなたもそう感じてるのね?)
世界で最も硬く、58面体から眩い輝きを放つ指輪を薬指に持つ彼女は、一樹の死に疑問をもっていた
"はい。殺しても死ぬような一樹ではありませんよ"
(そうね…あの方がトラック如きで死ぬとは…ありえないわ)
そうなのだ。彼女が "本気" であろうとも、彼は死なないのだ。
"調べますか?"
(ええ、もちろん。だけど多分…いや、間違いなく貴方には手に余るから、私がやるわ)
"…了解致しました。でわ一樹をお願いします"
一樹の葬儀が行われていた
「みなさん…今日はお忙しい中、馬鹿息子一樹の為にお集まりくださり、誠にありがとうございます。
生前、一樹は言っていました…スズちゃんと一緒にAVに出演したいと。アイツは根っからのスケベで、『スズちゃんとできるなら最高だよっ、死んでもいいや』と。
…こんな事になるなら、父親の私だけが出ずに…息子と一緒に出てやるべ
「ちょっとあなたっ! スズちゃんとってどーゆーことよっ?!」
「ちょ、落ち着いて母さんっ。ほら、みんな困って
「あなたっ?! もしかして、男優やっちゃったんじゃあないでしょうね?!」
「ドキッ」
「口に出すなっ!このバカチンコっ!!」
"ビターンっ"
「母さん、何もビンタすることないだろっ」
『えー…、えっと…しばらくお待ち下さい』
「「「「…………」」」」
「う、うみなひゃん…よかっひゃら、かひゅきの最後のきゃお、見てやってくだひゃい…」
何を話しているか分からない…
顔を腫らした父親が、一樹の収まっている棺の蓋を開ける
「「「「?!……………。」」」」
「な、な、な、南極2号じゃないかっ?!」
誰がツッコミを入れたか…想像してもらおう
(決まりね。上の存在が絡んでいるわ)
"そういうことでしたか…"
◇◇◇
「フンフン♪フフフっフン♪うふふ…」
ゆったりとした椅子に座り、お腹をさするエルゴ。
「早く産まれてねー♪ママは顔が早く見たいのよ〜」
喉が渇いたので紅茶を一口飲む
前はもっぱらコーヒーだった。だが、妊娠以後はコーヒーが口に合わなくなった
「好みが変わるってほんとうね〜」
厳選エルゴ紅茶をまた口にする
「フンフン♪フンフン♪うふふふっ」
「あらあら…随分とご機嫌ねぇ? 滅してあげたいわね…。いいかしら?」
"ブーっ?!"
…ガタガタ…ガタッ
「はっ?! 何故人間がココにっ?!」
エルゴはありえない状況にパニックになった
「ふぅん?人間…に、見えると?
…この私がか?」
凛子は三つ編みを解き、眼鏡を外す…
「あわわわわっ?! そ、そんなバカなっ?」
エルゴは慌てふためいた
「慌てなくても大丈夫。今、消すから」
凛子の目が赤黒く染まっていく
「いやぁぁぁっ! はっ?そうだ…私に手を出すと、創造神様を怒らせることになるわよっ」
「創造神?あぁ、チンチクリンの小娘か。全滅覚悟で争うのね?私は構わないわよ」
「いや、そういうつもりじゃ…」
「たかだか上級女神如きが、ソレを決めれないわよねぇ」
エルゴは既に漏らしていた。全部、そう全部だ。
「いゃぁぁぁぁっ?! まだ…消えたくないっ」
「駄々っ子はダメよ?これも運命ね…諦めなさい」
エルゴに近づく凛子。
近づくにつれ、凛子の右手が輝きだす
エルゴは絶対絶命、あとがない…はずだった
「ママ、だめっ!」
「んー?どうして花凛?」
幼女の助けが入る
「あのねママ、この女神のお腹にね、花凛の妹がいるんだよ。花凛、お姉ちゃんなの」
花凛と呼ばれるこの幼女が、潤んだ瞳で凛子を見上げる
「………花凛…そうね。花凛に…いいえ、かず君に感謝なさい」
「は、ははいっ!」
エルゴは助かったのだ。
「でもね、正妻はわたし。わかるわね?」
「はいです。私は2番です、もちろんですっ」
懸命に頭を縦に振るエルゴ
「あらあら…聞き分けの良い子は好きよ? あなたとなら、妻同士の良い関係が持てそうだわ」
凛子は優しく微笑んだ
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