科学部始動!!

翌日、その日の全ての授業が終わり放課後になった。

遂に科学部の活動が始動する。

部室に集まった部員5人に先ず俺から挨拶をした。

「科学部の顧問になった茶鶴 朝倉です。朝倉先生でも茶鶴先生でも好きに呼んで下さい。君たちが科学に興味を持ちこの科学部に入部してくれたことを心から嬉しく思います。これから宜しく!!」

「「お願いします。」」

口を揃えて答えてくれた。

…なんか教師って感じだ。悪くない。

そして部員全員に自己紹介をしてもらった。

とは言っても5人中4人がブロンズクラスの生徒である。そもそも子供の数が少ないこの村では子供同士で知らない者などいないらしい。

なのでこれはほぼ俺へ向けての自己紹介みたいなものだった。


アルフレッド サイノン

皆からはアルフと呼ばれているらしい。部員の中で最年長。


アフロディーテ サイノン

アルフレッドの妹。神童。自他共に彼女のことをディーテと呼ぶ。口数が少なく人見知り。


ダレン ローリング

科学部の発起人。魔法が使えないため科学への興味は人一倍強い。


サマンサ オクマサ

双子のオクマサ姉妹の姉。アフロディーテと同い年で学校に入る前はよく同い年3人で一緒に遊んでいた。明るく元気で大雑把な性格。


タバサ オクマサ

双子のオクマサ姉妹の妹。明るく元気で几帳面な性格。


さて、自己紹介も終わり早速部活動を開始…と言いたいところだがこれを部員に配らなければ始まらない。

科学と切っても切れないもの、高貴で神聖な純白の衣。

そう、白衣!!

この科学部のユニフォームである。

俺がこの世界に来た際に着ていた白衣を魔法の先生に渡し魔法で複製して貰った。

その際サイズをSS、S、M、L、XLと5種類各5枚づつ用意して貰った。

それを部員全員に合いそうなサイズを見繕い配る。

残念ながら化学繊維を複製する事が出来なかったため生地は綿である。

この辺の魔法で出来ることと出来ないことの境界には少し興味がある。


部員全員白衣に手を通す。

「茶鶴先生の服装見て変わった服だなぁって思ってたけど着てみると案外着心地いいですね。」

ダレンは意外そうな顔をしている。

「なんかダサくないですか?」

「おにぃ、か、かっこ、いい。」

「うん!!サイコーだね。ディーテも似合ってるよ!!」

そんなやり取りをサイノン兄妹がしている。

サマンサは着るやいなや部室をドタバタと走り回っている。その様子を見ながらタバサが注意する。

「こら、サマンサ!!ちゃんと前のボタン留めなきゃ駄目だよ!!」

注意するべきところはそこではない。

「サマンサ、白衣にテンション上がってくれたのは嬉しいが落ち着いてくれ。部室で走り回るな。」

今後、薬品等を扱うことになるだろうからな。その時に走り回ると本当に危ない。

注意すると案外素直に言うことを聞いてくれた。

そして皆を集め席に座らした。

必ず決めておかなければならない事が一つあったのだ。

それは科学部のリーダー、つまり部長である。

他の部は全てゴールドクラスの生徒が部長だそうだ。

しかし科学部の唯一のゴールドクラスの生徒は未だ6才だ。

流石に部長をやるには無理がある。ならばその兄である最年長のアルフレッドが無難か。

ブロンズクラスでもリーダー的なポジションなので適役だろう。

しかし俺の本音では…


そこで俺は公平に部員自身に多数決で決めさせることにした。

紙切れを部員全員に渡し部長に相応しいと思う人物の名前を書いて見えないように2つに折ってもらう。それを空き箱に集めた後に開票。

・アルフレッド

・ダレン

・ダレン

・アルフレッド

4枚空けて2人に2票ずつ。接戦だ。最後の1枚を開ける。これで部長が決まるのだ。


・サマンサ


……

………

確かにこの可能性を考慮すべきだった。しかも恐らくこの字はサマンサ本人の字だ。さっき白衣に名前をミミズのような字で書いていたがそれとソックリ。まぁ自分の名前を書いちゃいけないという決まりは無いしな…やる気があるのはいいことだ、うん。

「じゃあ上位二人に絞ってもう一度するか。」

そう言ったらアルフレッドが挙手をしてこう言った。

「先生。僕、棄権していいですか?」

「ん?なんで?やりたくないのか?」

「いや、そういう訳じゃないです。もし一回で僕に決まってたら引き受けようと思ってました。けどここで同票ならやっぱりダレンが相応しいと思う。」

ダレンが驚いた様にアルフレッドを見た。

「そもそもダレンがいなかったら科学部自体出来てなかったでしょ?それに僕はダレン程科学に情熱を持ってる訳じゃないし。」

「しかし、サマンサに入れた人が次に選ぶのがアルフレッドかもしれないじゃないか。その人の気持ちを無下には出来ないよ。」

俺がそう言うとサマンサがあっけらかんとした声でこう言った。

「ん〜。ホントは私がやりたかったけどそういうことなら次は私ダレンって書くよ!!」

…折角誰が誰に入れたか分からないようにしたのにこの子は…まぁ俺にはバレバレだったが。

兎に角こうなったら決まりだな。あとは本人の意思次第だ。

「ダレン君、部長やってくれるか ?」

そう尋ねると驚いて固まっていたダレンは慌てて答える。

「は、はい!!僕なんかで良ければ!!」


こうして部長はダレンに決まり、副部長にアルフレッドが着いた。


ここで下校の鐘が鳴り科学部の活動初日が終了した。

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