兄妹と姉妹

部員が見つからないまま数日が過ぎた。決して諦めた訳ではないが流石にもう無理なのかという考えが頭にちらつき始めていた。

ダレンも徐々に暗い表情を見せることが増えていき、これはマズいと思いながらも俺は状況を変える方法を見い出せずにいた。

そんなある日、昼食中に二人の生徒が俺の元を訪れてきた。

一人はブロンズクラスの最年長、確か名前はアルフレッドだったか。

そしてそのアルフレッドの後ろに隠れるようにしているのはあの学校創立以来の天才児。神童アフロディーテ サイノンであった。

「ほらディーテ、自分の口から言うんだよ。」

アルフレッドがそう促す。

しかしアフロディーテはアルフレッドの後ろでモジモジしていてなかなか喋らない。

アルフレッドは微笑みながら溜息をつくと代わりに喋り始めた。

「妹が科学部に興味があるみたいで話を聞きに来たんです。僕がダレンに聞いても良かったんだけど妹の人見知りを治すチャンスかなと思って。」


なる程、兄妹か。そう言われてみればアルフレッドのファミリーネームもサイノンだったな。

…というよりこの神童が科学部に興味を!?

俺のテンションはグンッと上昇した。このチャンスを逃す手はない。

「君は科学に興味があるのかい?」

俺はなるべく優しい口調でアフロディーテに尋ねる。ここで焦ってがっついたら恐らくこの生まれたての子鹿のようにぷるぷる震えている幼女は畏縮してしまうだろう。

「ディーテね、魔法や他のお勉強はね、自分でご本読んだりして出来るんだけどね、科学ってご本があまり無くてね、もっと教えてもらいたくてね…」

たどたどしくはあるがアフロディーテは答えた。

…なんだこのかわいい動物は。チワワとか仔猫とかそんなのを見ている気分になった。周りの人間に守ってやりたいと思わせる力がある、そんな感じだ。

いかん、顔がにやけてしまいそうになるのをぐっと抑える。

「そうか、科学部に入れば授業でやる以上に教えてあげられるぞ。入りたいかい?」

「うん。ディーテね、科学部に入りたい。」

俺は心の中で歓喜を上げた。これで部活を始動出来る!!

ダレンにも早く伝えなくては!!

なんとか冷静を保とうとしているとアルフレッドが話し出した。

「僕も入部していいですか?今まで妹と帰宅するために部活入ってなかったんだけど妹が部活をするなら僕もしないと一緒に帰れないし心配だから。」

どうやらアルフレッドはシスコンらしい。妹に甘々だ。

「勿論。二人とも歓迎するよ。」


放課後そのことをダレンに教えると涙を浮かべて喜んだ。

その様子を見てこっちも少し泣きそうになってしまったがそこはグッと堪えた。

更にそこで予想外のことが起きた。

その会話を聞いていたブロンズクラスの双子の姉妹、サマンサとタバサがこう言ってきたのだ。

「ディーテちゃんが入部するなら私達も入る!!」

「クラス別れちゃったからあまり遊べなくなっちゃってつまらなかったの!!」


勿論断る理由がない。

あれだけ苦労していた部員集めが一日でなんと四人も集まったのだ。


その日のうちに校長に申請したら即日で部室が用意された。校長曰く、

「あの情熱なら意地でも部員を見つけてくると思ってましたからね。準備はしておきました。」

とのことだ。


そして翌日から本格的に部活同を開始することになったのだった。

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