神童
ゴールドクラス。
計5名。
リンのいるクラスだ。そして噂の神童は6才の可憐な少女、というより幼女だった。
例に漏れず軽く自己紹介、虫眼鏡と紙、そしてシルバークラスと同じく炎色反応の実験。
6才の生徒がいるので火を扱うのはマズいかと思ったがなんとこの神童、独学で既に火の魔法を習得していた。
まぁ、なので問題ないだろう。
生徒達の反応はシルバークラスと同様上々だった。
「へ〜。これ炎の魔法と組み合わせたら色々遊べそうね。夜やったら綺麗かも。今度やってみよ。」
リンがそう言う。やはり優秀だな。花火の概念がないこの世界でいち早くその発想に行き着くとは。
科学の発展にはこういう閃きが不可欠だ。
しかし例の神童は反応が薄かった。オドオドしていて何を考えているのかよく分からない。口数も少なくクラスに馴染めてないのかと思ったが別にそういうわけでもないらしい。
クラスの皆が彼女を自分の妹のように接していた。
その日の授業も無事終わり昼食の時間が来た。
食堂に行き給食を食べていたらダレンが隣に座ってきた。
「部員になってくれる人中々見つからなくて…何か良い方法ありませんか?」
「いや、俺も授業でなるべく興味を持ってもらうようやってみたんだがな。どうにも…」
ハーッと2人同時に溜息をつく。
「ちなみにリンは何か部活に入ってるのか?」
「リン姉は魔法部の部長です。他の2つの部の部長もゴールドクラスの人達。やっぱあの人達は凄いよ。ゴールドクラスは憧れそのものです。」
ダレンは魔法こそ使えないが他の科目はなかなか良い成績だと聞く。体育が少し落ちるがそれも決して悪い成績というわけではない。
「ダレン君でもやっぱ難しいのか?ゴールド試験。」
「魔法を使えないのが致命的なんです。ゴールド試験は主要科目の筆記と筆記では計れない要素を総合的に判断出来るような課題が課せられる実技試験というのがあって、しかも毎年内容が変わるんです。筆記は良い成績取れても魔法が使えないと実技のほうでどうしても…」
なる程、魔法がここまで浸透している世界でそれが使えないとなるとやはり実技形式の試験ではなかなか厳しいものがあるのは明確だ。
「だからこそ科学をもっと学びたいんです。実技で魔法が使えなくても課題をクリア出来るようになりたいんです。」
「そうか、応援するよ。頑張ろうな。」
ふと時計を見ると昼休みの終わりが迫ってきてた。周りにも殆ど人は残っておらず、俺とダレンは残りの給食を慌てて口にかき込んで食堂をあとにした。
その様子を食堂に残った最後の生徒が見つめていたのだが俺とダレンはそれに気づくことは無かったのだった。
―――――――――――――――――
【補足】
この世界の時計は電力の変わりに魔力で動いている魔道具の一種である。
周囲の人間からごく微量な魔力を収集して動いている。
時間の概念は茶鶴のいた世界と大差なく12進数となっている。
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