ダレン君の頼み


ドアを開けるとそこにはダレンが立っていた。


「おう。どうした?」


モジモジしてかなか答えない。


立ち話もなんなので部屋に入ってもらう。


「何か要件があるのだろ?」


そう尋ねるとダレンは意を決した様に喋りだした。


「茶鶴さん、いや、先生。僕を弟子にして下さい!!」



「はい?」


唐突過ぎて思わずそう口に出てしまった。


「僕は、魔法が、使えなくて、いつも悔しくて、羨ましくて、切なくて、でもどうにもならなくて、半ば諦めていたんです。



でも今日の授業で火を起こした時、魔法が使えなくても科学を学べば魔法と同じことも出来るんだって凄く感動したんです。希望が見えたんです。もっと科学について学びたい!!もっと魔法にも引けをとらないことをできるようになりたい!!そう思いました。だから…


…弟子にして下さい!!」




最初の方は途切れ途切れに発してた言葉が途中からを堰を切ったように一気にダレンの口から溢れ出た。


一人だけ魔法が使えないのがやはり相当コンプレックスなのだろう。皆が当たり前に出来ることを出来ないという劣等感や疎外感は10才の少年にはかなりキツイはずだ。


ダレンには凄く助けて貰った。とても大きな恩がある。手を貸せるならいくらでも貸してやる。


だが教師として赴任した手前一人の生徒を特別扱いするのはどうなのか。


俺は頭を悩ませていたらダレンがうつむきながら続けて言う。


「駄目…ですよね。学校の仕事もあるのにその上弟子を取るなんて無理ですよね…


ごめんなさい、無理言って。忘れてください。」




リンの言葉が脳裏に浮かんだ。


『私としてはもう少し自分本位でも良いと思うんだけどね。』


その通りだ。


この少年は自分のコンプレックスを解決してくれる光をやっと見つけたのにそれでも人の都合を考えてその光を手放そうとしている。


俺はギリッと歯噛みしてダレンの両肩に手を置いた。


「科学の授業はこれからも続く。真面目に取り組んでいけばそれなりの知識も身につくだろう。しかしそれだけではダレン君の理想としている所には届かないだろう。だけど俺は教師だ。一人の生徒を特別扱いする訳にはいかないんだ。


…だけどそれでもなんとかする。授業内容よりももっと高度な科学を学べるようにする。だから諦めるな!!」




「でも、どうやって?」


「それは…」


まだ何も解決策が見つかってないので返答に詰まった。


その時窓の外から声が聞こえた。


「一ついい方法がありますよ。」


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