模擬授業②

さて、虫眼鏡を使って火を起こすというとても原始的な実験の結果はというと、正直に言って微妙だった。


火を起こすこと自体は成功したのだが二人の反応が薄い。魔法を使える人から見れば非効率的に見えたのだろう。


「まぁ確かに不思議ではあるな。魔法も使わずに火を起こせるとは思っていなかった。だがな…魔法でやったほうが早いだろコレ。」


ナットが見も蓋もない事を言う。


「魔力を使いすぎて魔法を使えない時には役に立つかもですな。そんな事態なかなか訪れないがのぉ。」


ヨーダンブールが微妙なフォローをしてくれた。


なる程、魔法も無尽蔵に使える訳ではないのか…


それよりも思ったより微妙な感じになってしまったので俺は少し焦る。このままだと教師として採用されないかも知れない!!


「光には虫眼鏡のような凸レンズに通すと屈折してある一点で交差する性質があるのです。その交差する点を焦点といいます。その性質を利用して太陽光を集めその熱で火を起こす。科学というのはこの様に物事の原理や性質を理解し応用することを言います。科学を学んでいれば魔法が使えない状況下でも問題を解決出来る力となるでしょう。どのような事態にも備えて子供たちに生きる力を教えるのはとても大事なことだと思います!!」


焦ったためつい熱弁してしまった。ヲタク特有のアレだ。科学者なんてのは一人残らず科学ヲタクなのだ。


言い終わった後に恥ずかしくなった。


だがそこでヨーダンブールが目をウルウルさせて言う。


「素晴らしい!!その通りですな。あなたは良い先生になれるでしょう。流石ナット君の紹介じゃ。」


あれ?何やらあの熱弁が校長の教育魂に響いたようだ。


「では採用ということで宜しですか?校長。」


ナットがニヤッと笑い聞く。


「勿論じゃ。これから宜しくお願いしますよ。朝倉先生。」




俺はこうして教師となったのだ。

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