取調
ナットに担がれたまま村の中央付近にある警備隊の本部に到着した。他の建物に比べて若干ではあるが立派な外観をしている。中に入り魔法での拘束を解かれる。全く見動きが取れないというのは思った以上に辛いものだった。かなりの疲労感である。
部屋の中央に机とそれを挟むように2脚の椅子があった。その椅子に座るように促さられる。
「さて、とりあえず何か身分証になるものを見せて貰おうか。」
着席するやいなやいきなりそんな困ったことを言ってくるナット。どうやら仕事の出来る男のようだ。
財布など持ってきていない。免許証や保険証も何も持っている筈が無かった。まぁここでそんなものあっても役には立たなそうだが…
「何も持ってないです。昨日気付いたらあそこにいたんです。何が帰れる手掛かりがないか今日も探しに行ってました。」
時空間転移システムのことは伏せつつ本当のことを言う。
「気付いたらねぇ。ではお前は何処から来たんだ?」
「東京です。」
ここでも嘘は言わない。
「トウキョウ?聞いたことない場所だな。」
「えぇ昨日お世話になった方もそう仰ってました。」
「仕事は?」
「…研究者です。科学、つまり民間伝承や伝説といったものを研究しています。」
少し考えそう答えた。
「科学とはまたけったいだな」
「はは」
俺は苦笑いで答える。
「とりあえず身分がはっきりするまで拘束させて貰うしかないが。」
そんな…拘束されたら帰りようがないではないか。
絶望しかけたその時、ガチャッとドアが開く音がして誰かが入ってきた。
「パパ、お疲れ様。お茶持ってきたよ。」
赤い髪の気の強そうな顔。今朝見た顔、リン アウトバンだ。
え?パパ?マジで?
「あれ?今朝の怪しい人だ。」
「お?なんだリン。この怪しい男知ってるのか。」
…親子揃って失礼なものだ。
まぁ客観的に見たら俺が怪しいのは確かだが…
しかしながらこのリンの登場により最悪だった状況は好転した。
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