魔物

ダレン達と別れ、記憶を頼りに探し、そして辿り着いた。昨日俺が倒れていた草原だ。少し道に迷ってしまい意外と時間がかかってしまった。もう日が暮れかけている。


俺は何処かに時空間転移システムがないかと周りを見渡す。


…が、それらしきものは見当たらない。


「おかしいな。時空間転移システムの構造上必ずあるはずなのだが…」


と思いつつも同時にこんな所に時空間転移システムがある筈がないという思考も存在していた。あれは俺が作ってまだ間もない。こんな何処とも何時とも分からない世界、更には草原にあるとは考えづらいのだ。




いかんな。また混乱して来た。少し頭の中を整理しよう。




俺がこの世界に来たのはあの実験のせいだ。それは恐らく間違いないだろう。


となれば時空間転移システムの構造上ここもそれがある筈だ。


しかし何処にも見当たらない。しかももしあったとしても何故こんな所にあるのかが分からない。


…こんな所?


ここは何処だ?


カーマ村。そして魔法暦217年…違和感。217年という年月は歴史において余りにも短い。それ以前は…




そこまで考えたところで背後に何かの気配に気付き振り返る。


そこに居たのは蟻。ただし体長2メートルはあるであろう巨大なそれを蟻と呼ぶのならだ。


昨日のダレンの言葉が脳裏に浮かぶ。


魔物、これは魔物だ。


考え込んでいる内にすっかり日は暮れ、星明りに照らされた巨大な蟻と俺は対峙していた。

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