ダレン少年の事情

その日はダレンの家に泊めてもらうことにした。宿をとるにしてもこの世界の通貨など持ち合わせてないからだ。


「夕飯が出来ましたよ。」


母親が食卓に料理を運んできた。とても美味しそうな良い香りが家中に拡がる。


グゥ~


この世界に来る直前まで時空間転移システムの開発にのめり込んでいた俺は腹の虫が鳴くのをおさえられなかった。恥ずかしい…


「ふふ、沢山食べてくださいね」


「泊めてもらうだけでも有り難いのにこんな美味しそうな食事まで頂いてしまって本当にありがとうございます」


「いえいえ、お口に合えばいいのですけれど…」


勿論とても美味しい。この世界の味付けは俺の世界のそれに近いようだ。


「茶鶴さんて何やってる人なの?見慣れない格好だけど」


ダレンが聞いてきた。


「科学者兼発明家だよ。天才だからな」


したり顔で言ったところ数秒の沈黙が続きその後予想外の反応が帰ってきた。


「ハハハハッ」


大爆笑である。


「科学ってそんな伝説上の作り話さすがに僕も信じないよ」


なに?科学が作り話?


「ダレン、食事中にはしたないわよ。民間伝承の研究者ってことかしら?」


科学が民間伝承?


「科学なんて伝説調べても意味あるのかな?全部魔法で何とでもなるのに」


そうか、この世界は魔法が発達し科学の必要がないのか。というか魔法というものはそこまで万能なのか?俺はショックを受けた。


「魔法というのは皆使えるのですか?」


迂闊な質問をしてしまった。つい先程まで笑顔だったダレンの顔が暗くなる。


「普通は自由に使えるんだ。けど僕は何故か使えない。そのせいでいつも皆に馬鹿にされるんだ。」


しまった。家についてすぐにそう言っていたではないか。


「ていうか茶鶴さんも魔法使えるでしょ?」


「いや、俺は使えない、使ったことがない」


ダレンの顔に少し明るさが戻る。


「茶鶴さんも?僕だけじゃなかったんだ!!」


「あ~あ、科学が本当にあれば僕もいろんなこと出来るようになるのになぁ。


あ、だから茶鶴さん科学の研究なんてしているの?」


俺は微妙な笑顔を浮かべ誤魔化す。




食事を終え風呂までご馳走になり俺は寝床に着いた。


早く元の世界に戻らなければ、ローリング親子はいい人達だがこの世界で俺は生きて行けるきがしない。


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