ダレン少年の家
30分程歩きたどり着いたのはレンガ造りのファンタジー映画に出てきそうな風変わりな一軒家。
いや、歩きながら他の家や建物を見ていたがどれも似たようなものだった。つまりはこれがここでのスタンダードなのだろう。
ダレンはただいま~と言いながら玄関の木製のドアを開け中に入る。
「お邪魔します」
後に続いて入ると外観から想像していた以上に中は広い。
「お帰りなさい。何方か一緒なの?」
ダレンの母親らしき女性が二階に続く階段から降りてきた。なかなかの美人である。
「うん。チャールズさん。村のはずれで倒れてたんだけど記憶が少し混乱してるみたいだったから連れてきた。」
「違う。チャールズじゃない。茶鶴だよ。ちゃ、づ、る!!」
訂正しつつ母親らしき女性に挨拶をする。
「朝倉茶鶴といいます。気を失ってたいたところダレン君に助けて頂いて。落ち着くまで家に来るよう言われたのでお言葉に甘えさせてもらったのですがよろしいでしょうか、長居するつもりはありませんので…」
「あら、それは大変ですね。たいしたおもてなしも出来ませんがゆっくりしていってください。もし必要ならお医者様をお呼びいたしましょうか?」
「いえ、それには及びません。少し落ち着いて考えさせていただければ大丈夫だと思います。あの、私は東京から来たのですが帰りかたをご存知でしょうか?」
「トーキョー?聞いたことない土地ですね。申し訳ありませんが…」
実のところもう冷静にはなっている。しかし冷静だからこそここが何処か今がいつなのか検討がつかない。見慣れない町の風景や町人の服装、カーマ村という名前、魔法暦という聞きなれない言葉、言葉は通じるのに首都である東京を知らない人々。どれもこれも訳がわからない。
恐らく時空間転移システムのバグか誤作動でここに飛ばされたのであろうが腑に落ちない。時空間転移システムは時空間転移システムのある時代と場所にしか飛べないはずなんだが…
「いや、待てよ。」
ここに来たということは少なくても倒れていたあの場所に時空間転移システムがあるはず。もう一度あの場所に行きそれを見つければ帰れるかもしれない。帰れさえすればここがいつの何処なのかなど関係ない。
「ダレン君、今からもう一度さっきの所に行きたいんだ。悪いけどまた案内してくれないかな。」
ダレンは驚いた様子でこう言った。
「え?今からだと暗くなっちゃうよ。あの辺は夜になると魔物が出て危ないし今日はもう家に泊まって朝になったらもう一度行こうよ」
魔物?魔物ってよくゲームとか映画に出てくるアレ?ヤバい。また少し混乱してきた。
「魔物ってなんだよ、そのうち魔法とか言い出すんじゃないだろうな」
こめかみをおさえながら呟いた一言にダレンは反応し急に暗い顔をした。
「僕、落ちこぼれで魔法使えないんだ。あそこにも召喚魔法の練習しに行ったの。近々テストがあるから。そしたら茶鶴さんが倒れてて…」
ここはどうやら魔物がいて魔法が使えるそんな世界らしい。異世界にでも飛ばされてしまったのか。俺はその場に崩れ落ちた。
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