第7話 交際の喜び
まったく、人間と言うのは大抵酒精に弱い。
ついこの間の、
湖沼
彼と妹の
結局、去年以来
今真穂は、足元がギリギリ使えている海峰斗を軽く支えながら居住地まで運んでいる。妖術で瞬間移動をしても良かったが、たまには人間のように夜道を歩くのも良い。
と、同時に見せつけてやりたかったのだ。
この、妖の血縁でもある人間の男は、自分の物だと。コソコソと、真穂の懐をつけ狙う悪質な連中には辟易していたからだ。
なら、真穂の気持ちが本物かとなった相手である海峰斗を。無防備な姿であれ、真穂自ら介抱している人間が只者ではないことを示すため。
現に、遠巻きに舌打ちをする連中を見て、真穂は気分がいい。
そう思いながら、界隈の奥の奥。ビルのような建物に入り、迷うことなくエレベーターに乗って最上階まで登ると。
海峰斗が、まだ酔ってはいるが目を覚ました。
「……あれ?」
「気がついた? みーほ?」
「……どこ?」
「真穂の家。来るって言ったじゃない?」
「あー……うんうん。思い出した。
「で、エレベーターだけど。もう着くわよ?」
「……おー」
が、降りてからの反応が面白かった。
「さ、どうぞ?」
「……え?? エレベーター直結!? 広!? 床大理石!? 真穂ってお金持ち!?」
「LIMEでも言ったじゃない? こっちの界隈じゃデパートの役員のようなものもやってるって」
「あと売れっ子小説家……だから?」
「まーね!」
ここまでの財を築き上げてきたのは容易ではないが。美兎のような好ましい霊力を保持する人間と出会うまでは、実に味気ない生活を送っていた。
だから、あの日。
こうして結ばれるに至ったわけだが。
「……けど。普段はほとんど、美兎の家に行ってんだろ? なーんか殺風景だなって」
「いいとこに気づいたわね?」
小説家の仕事のスペースも、案内しながら教えた一間で事足りているし。自炊はしなくもないが、そこまで食事を必要としない真穂達妖にとっては嗜好品に近い。
なので、普段は酒かコーヒーとかで済ませている。人間にとっては不健康そうだが妖の主食は霊力や妖気だから関係ない。
それを告げれば、なるほどと頷かれた。
「じゃさ、じゃさあ? 毎日は無理だけど。会う日には俺がなんか作るよ? 美兎よりは得意だし」
「あら嬉しいわね? けど、別にあなたを小間使いのつもりで付き合っているわけじゃないのよ?」
「まーね? けど、俺って付き合うと尽くしたいタイプだからさ? もちろん、火坑さんとことか他の店も知りたいけど。俺と二人で過ごしてほしい」
「!……ほんと」
美兎もだが、湖沼の人間。あの
だが、不思議とそれが不快に感じない。
「? どかした……!?」
不意の喜びをくれたのなら、真穂もそれを与えようと。
真穂は少し背伸びをして、海峰斗の唇を奪った。
「……どうせなら、真穂と一緒に作る選択肢はないの?」
「…………喜んで」
これが交際と言うことなら、今まで疎遠だったのを恨むくらい。けど、待った甲斐があったかもしれない。
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