第40話家族の温かさ
短めです。
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ホントに仕方のない人だなぁ……。
未だに俺の膝の上で熟睡している先輩。その様子はとても愛らしく、俺に愛でたいという気持ちを芽生えさせる。
ダメだとはわかっていながらも、俺は七海先輩の頭に持っていく俺の手を止められなくて、そのまま先輩の頭をゆっくりと撫で始めた。
「……ん、ままぁ」
何かを求めるような、何かに
母親の夢でも見ているのだろうか……今は亡き母親の。
高校生と言っても、まだ心に幼さは残っているし、十何年も一緒に過ごしていた人がいなくなって、そんな簡単に受け入れられるものではないだろう。
七海先輩は学校じゃあそんな心の弱さは全く見せていなかった。むしろみんなを笑顔にしてくれる。そんな存在だった。
だからこそ、今にも折れてしまいそうな先輩の表情を見ていると、励ましてあげたいと、何か助けになってあげたいとって思う。
所詮俺にできることなんて限られているし、俺にできることなら、生徒会のほかの面々の人でもできるかもしれない。
だけど、先輩が悩みを打ち明けてくれたのも俺だ。頼ってきてくれたのも。
今はこうやって、一緒にお泊りをしたりとかしかできないけど、先輩の心の負担を和らげることができるのならば、それはそれでいいと思う。
こうやって二人で遊んだりするのもいいし、生徒会のみんなで遊びに行くのもいいかもしれない。
今隣で寝ている日和と遊んでもらってもいいしな。
そうすることで家族の温かさみたいなものを届けられればいいな。
すると突然俺の後ろに回されていた手に力が入るのを感じた。
心なしか七海先輩の唇が少し震えているようにも見える。
呼吸のリズムも一定とは言い難い。
短かったり、早かったりして、何かを焦っているようにも見える。
眉間にもしわが寄っていて、漠然とつらそうということだけが感じ取れる。
俺は何をしてあげればいいのか、七海先輩が今、してほしいことはなんだろうか。
俺にはそれがわからなかった。
ある意味それは当然だろう。俺は七海先輩ではないから。
だから、まるで赤ちゃんをなだめる母親のように。子守唄をうたう母親のように、七海先輩の背中に手を当て、トン、トン、と今にも壊れてしまいそうなおもちゃを扱うようにしてさする。
それは力加減も曖昧でへたくそなものだったけれども。七海先輩はそれを優しく受容するように、手に込めた力を抜いていく。
なんとかできただろうか。よくわからないけど安心からか、ため息を一つ吐く。
七海先輩の顔を見ればうっすらと微笑を浮かべていたが、目じりには少し涙が溜まっていた。
それが一筋の線を作りながらゆっくりと零れ落ちて、俺のズボンに小さなシミを作る。
それはまるで、すべてを映すガラス玉のような透明さを含んでいて、一つの絵のようだ。
でも俺にはその絵がひどく
だからというわけではないが、口では言い表せないような気持ちが俺の中にふっと浮かんできて次の瞬間に俺は――。
――七海先輩の首に手を回し彼女を抱きしめていた。
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あとがき失礼します。
これにて七海先輩パートを終わりにします!
このあとの話は正直不要かなと思ってしまいまして……。
もしかしたらどこかのタイミングでこの後のお話を出すことがあるかもしれませんので一応予告しておきます笑
次回からは小鳥先輩パートの予定となります!
面白いなど思ってくれた方はお星様などをつけてくれるととてもうれしいです!!
それでは次回もお楽しみください!
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