第28話横浜へ!
週末。
駅前。
俺は一人で待っている。
この状況が表すこと。それはとても珍しい事だった。
唯花先輩が遅刻をしたのだ。
あの唯花先輩が。
ちなみに俺は15分前からいたのでかなりの時間待ってます。
絶対そんなことは口にしないけど。
さっき唯花先輩に電話をかけた時の焦った感じはとっても可愛かったので、この程度の待ち時間は屁でもありませんけど。
そうしてまた15分ほど経った。
イライラはしてこないけど、少し退屈だなという時間が続く。
すると後ろからタッタッという少し焦ったような足音がした。
「ご、ごめん!凪くん!遅れちゃって!待った······よね」
「おはようございます。唯花先輩」
振り向いたらすっごいいい匂いがした。
そしてめっちゃ可愛い女の子が立っていた。
俺は言葉を失ったように、その姿に見入ってしまう。
袖にフリルの着いた、真っ白な服。
それに合わせた短めのスカート。
ナチュラルにメイクの入れられた整った鼻梁にスタイルのいい身体。
正直言って反則だ。
こんな美人がこの現実にいていいのだろうか。
唯花先輩はまるで天使のようだった。
「先輩。すっごい可愛いです。めちゃめちゃ似合ってます」
「ありがと。凪くんもお世辞が上手になったね」
お世辞じゃないのにね。
「唯花先輩。遅れた代わりにしたいことがあるんですけどいいですか?」
「私に出来ることならいいよ?」
――今日一日先輩を独り占めしていいですか?
そんなギザなセリフは俺には言えなかった。
「やっぱり······何でもないです」
唯花先輩は首をかしげて、なんの事だかよく分かって無い様子だ。
それも当然。だって俺はそんな事を言ったりするキャラじゃないんだから。
「それじゃあ行きましょうか」
横浜までは1時間ちょっとで着く。
そこから二駅で元町・中華街駅だ。
長いのか短いのかはよく分からないが、きっと話していたら直ぐに時間なんて過ぎていっているだろう。
電車に揺られていると唯花先輩は眠そうにしていた。
「唯花先輩?眠いんですか?」
「うん······あんまり寝れなくて」
「もしかして楽しみで寝れなかったとかじゃないですよね?」
すると唯花先輩の顔はだんだんと朱に染まっていく。
まさか?そんな小学生みたいなことがあるのか?
「実はね······。うん。楽しみで寝れなかった」
申し訳なさそうに唯花先輩は顔をうつむけさせながら、そう言った。
きっと中学生にみんなで言った時のこと思い出しちゃったんだよね。そうだよね?
俺も楽しみではあったが眠れないことはなかった。
あまり触れずにいこう。ちょっと先輩が可哀想に見えてきた。
そう心に決めて、話題は選びながら横浜に着くまでの数時間を気ままに過ごした。
「やっと着いたぁ〜!」
唯花先輩が体を伸ばす。
待って後ろに反らないで。
視線がすっごい集まってるから!!
唯花先輩は目を見張るほど立派な二つのそれが付いている。
それは周りの男性を魅了していくのだ。
彼女連れの男性方は何かしらされていた。
ほっぺを引っ張られたり、頭を叩かれていたり。あ、スネを蹴られてる人もいる。
お大事に······。
唯花先輩の事を見てる方が悪いです。
ごめんなさい。俺もバッチリ見てました。
「凪くん?何ボーッとしてるの?行こっ!」
そう言って唯花先輩は俺の手を引いて、街の中に2人で繰り出した。
周りの視線が痛かったです。
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