第29話どんなふうに見える?
「唯花先輩、はしゃぎすぎですって」
「だって楽しいんだもん」
ていうか、まだ何にもしてないのになんでこんなにはしゃいでるんだ。
少なからず、俺の心も高ぶっているのは間違いないが。
中華街の美味しそうな匂いが俺の鼻を通ってお腹を刺激してくる。
「唯花先輩はお腹減りました?」
「私は朝あんまり食べれてないから、ぺこぺこだよ」
唯花先輩は自分の引っ込んだお腹に手を置きながらそう言った。
「じゃあ、小腹を満たしに何か食べに行きますか?」
「そうだね、じゃあ何を食べに行く?」
そこで俺は頭を完全に抱え込む。
中華街っていうくらいだから適当に中華っぽいものを食べればいいと思っていた。
だけど、まだ時間は十時頃。さすがに主食を食べるには少々時間が早すぎる。
でも、俺は小腹をいい感じに満たせるものなんて把握してないぞ!?
「唯花先輩は何が食べたいとかあります?」
結局唯花先輩に頼ることにしました。
「う~ん、私は小籠包とか食べてみたいな」
小籠包か……。ちょっと重くない?
「小籠包って結構お腹にたまりません?」
「街頭で買えるものならあんまりたまらないから平気だよ!食べ歩きってやつ?してみない?」
「それならいいですね。じゃあ買いに行きましょうか」
そして俺たちは足を進め始めた。
「ここですかね」
「そうだね。じゃあ早速食べよっか?」
そして、何組かだけ並んでいる列の最後尾に並んだはいいものの、小籠包の匂いにとにかく俺のお腹が刺激されている。
マジでお腹が減ってきた。こんなにいい匂いのするものなのだろうか。
そして前の人たちが退いて、俺たちの番がやってきた。
「小籠包を二つください」
「はい。400円でーす」
俺は財布を取り出し、500円硬貨を一枚置いて、小籠包を譲り受けた。
「はい。唯花先輩」
「あ、ありがと……お金いいの?」
「別にいいですよ。俺がしたいからしたってっことで」
「じゃあ、いただきます」
唯花先輩はその小さな口で、端っこをちょっとだけかじった。
「おいしいですか?」
「あ、あふい」
唯花先輩の口からは少量の湯気が。
俺も大きめにかじりついた。
やばい。普通に熱い。口の中で転がしてないとやけどしてしまいそうだ。
そしてある程度熱も冷めてきたところで一思いに飲み込んだ。
熱くて味があんまりしなかった。
唯花先輩は俺の隣でフーフーと息を吹きかけていて熱を冷ましていた。
一つ一つの動作がかわいい。萌える仕草とでもいうのだろうか。
そんなものを唯花先輩がやったら萌えないわけがない。むしろ萌えない奴は男じゃない。きっとそいつはホモだろう。
唯花先輩のせいでまた変な注目を集めてるし……。まじでモデルとかになったら売れそうだな。
「食べ終わったらどこかいきます?」
「山下公園とかいってみない?」
ということで山下公園に行くことになりました。
小籠包片手に山下公園へ向かっていく。するとだんだんと青い海が見えてきた。
この公園は海に隣接していて一望することができる。
これは下調べしたからとかじゃなくて、一度行ったことがあったからです。
もっと下調べしてくるべきでした……。
「ねえねえ凪くん。あの船をバックにして写真撮らない?」
「もちろんいいですよ。俺がカメラ持ちましょうか?」
「自撮りは嫌だからお願いしよっ!」
そして唯花先輩は近くにいた観光客に声をかけて、連れてきた。
コミュ力高すぎ……。なんでそんな普通に声かけられるの……。
俺にはできない。絶対に。
「ほらほら凪くん早く」
唯花先輩は俺を手招きして、呼んでくる。
少しだけ駆け足で彼女のもとに向かう。そしてされるがままに写真を撮られた。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。彼氏さんもこんなかわいい彼女がいて幸せ者ね。絶対に幸せにしなさいよ?」
「あはは……。はい」
そう告げて、その人は俺たちの前から去っていった。
「私たちって付き合ってるように見えたのかな……?」
「そ、そうなんじゃないですかね……」
お互いに意識しあってしまい変な空気が生まれてしまう。
「凪くんは私のこと幸せにしてくれるの?」
「ば、ばかっ。先輩のあほぉぉぉ!!!」
俺は全身の熱が上昇するのを感じて、その場にうずくまってしまった。
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