第25話目撃報告
月曜日がやってきた。これから五日間も学校に通わないといけないという負の感情が降り積もる悪魔の月曜日。
いやだよぉ。学校行くのめんどくさいよぉ。
そんなことを思いながらも結局準備を進める手は止まらないのだが……。
己の気持ちに反して制服を着てしまい、学校に行かざるを得なくなる。
まず風邪でもないのに休むなんてありえないけどね。
そうしてかばんを持ち家を出る。
「行ってきまーす」
誰もいない家にそう言い放って俺は家を出た。
◇◆◇
教室についても話す相手が知るわけでもなくただ机に突っ伏して始業のチャイムが鳴るのを待っていた。
「なあなあ九重」
いつもは聞かない声。だけどどこかで聞いたことのあるような声。
顔を上げるとクラスメイトがそこに立っていた。
「えっと……坂口?だっけ」
「うん。そうだけど。クラスメイトの名前も覚えてないとはな……」
「うっ……ごめん」
「まあ、いいけど九重って体育祭の日、生徒会の人たちとご飯食べに行ってた?」
「あ、うん。行ってたよ?一応俺も生徒会だし」
「だったら……」
だったら……?
「絶対に許さないからな!!あんなにファミレスでイチャイチャしやがって!!うらやましいだろこんちくしょう!!」
えぇ……。ちょっと理不尽じゃないですかねぇ……。
あれは不可抗力だ。許してくれないかなぁ。
そう思っても坂口の目には若干の殺気がこもっている。
「そ、それは悪かったって。ごめん。ていうかなんで坂口がそのことを知っているんだ?」
「それは俺があそこでバイトしてるからだよ!」
あぁ……。それは本当にごめんだわ。
「しかもお前昨日はあの桜庭先輩と二人でデートに行ったらしいな!」
「デートじゃないです!!本当に!!ただご飯食べに行っただけです!」
あながちデートともいえる気がしたが、そんなのは関係ない。あれはデートじゃい。
「しかも桜庭先輩とお前がそのヤった疑惑が浮上してるんだぞ?しかも夜の陽北駅周辺でばっちり確認されてるし、インスタのストーリーズでは桜庭先輩が『九重くん鬼畜すぎ』って投稿もしてるし、もう言い逃れできないだろ!」
やっぱり俺の学校生活がぶっ壊れていきそうだ。桜庭先輩も自分の首を絞めているような気がするが、自業自得だろう。
「やってないし、ただご飯を食べに行っただけ。鬼畜すぎってのは先輩が初心すぎただけ」
「初心すぎたって……お前やっぱり――」
「恋愛初心者過ぎたって意味だからね?」
「その、経験がないとかじゃなくて?」
経験なら俺もないんですが……。
「うん。ていうか俺だってまだ捨ててないし」
「本当だな?信じていいんだな?」
「信じるも何も、なにもしてないからな」
まあ誤解は解けただろう。完全にというわけではないが。
「まあ、いいや。で、九重は誰を狙っているんだ?」
なんですぐ恋愛に走るんだ。またこの話するとか、正直言って嫌なんだが。
「坂口は生徒会の中の誰かを狙っているのか?」
すると坂口は首を振って誰も聞いていないかを確認して、俺の耳にこう囁いてきた。
「立花先輩か小鳥先輩だろ。やっぱ」
やっぱ?その言葉に引っ掛かりを覚える。
「どうしてその二人なんだ?」
すると坂口は自分の胸の前に手を持って行って、何か二つのものを持ち上げるようなしぐさをする。
あ、こいつ変態か……。
確信した。なんたってあの二人は学校きっての巨乳美少女だからな……。
でも唯花先輩は鉄壁らしいし、小鳥先輩はコンプレックスっぽいから坂口には無理そうだな。
「坂口、諦めろ」
「どうして!?」
「多分あの二人はそういうやつには振り向かないよ」
すると坂口はがくーんと項垂れる。仕方ないだろう。あの二人に下卑た視線を向けるほうが悪いのだ。
俺も正直あの二人に付いた二つの果実が気になるところではあるが、俺は紳士だからな。そうであると信じたい……。
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