第19話約束

ファミレスから出て夜の街に出る。

まだちらほらと陽北生の姿があり、グループ単位で打ち上げしているんだろうとうかがえる。


「それじゃあ、もう解散かな。もう九時も過ぎたし」

「そうですね、じゃあ駅に向かいましょうか」


歩いて一分ほどで改札前。そしてそのまま改札をくぐる。


「じゃあね!」


皆で手を振りあって別れる。逆方向なのは、小鳥先輩と桜庭先輩の二人だ。

四人になった俺たちでまた話を始める。


「楽しかったね。またやりたいなあ」

「そうですね。またやりましょうか」

「今度は凪くんの家でやる?」

「七海先輩……なんでそうなるんですか……」

「いやぁ。やっぱ男の子の部屋って気になるじゃん?」

「じゃあ、俺だって女の子の部屋、気になるので行かせてください」

「それは……」


なんで渋るんだよ。俺が変なこと言ったみたいになってるじゃないか。

まあ変なこと言ってるのは間違いないんだけどね。


「でも……凪くんならいいよ?」

「そうですか?でも嫌だったらいいんですよ?」


入りたい気持ちを抑えて、断る俺。紳士かもしれない。


「いや、いいよ?その時はでなにしよっか?」


心なしか二人での部分を強調していた気がする。まあ、気のせいか。


「そうですね……七海先輩って好きなものとかあるんですか?」

「好きなものかぁ~本は好きかな?結構な濫読派だし、ラノベとかでも純文学とかでも読むから」


女の人ってあまりラノベとか読まないものだと思ってた……。世間的にはオタクみたいな印象がまだ残っているし。


「先輩もライトノベルとか読むんですね!俺も結構いろんな本は読んでるので、一緒に何かの本について話したり一緒に読んだりしましょ!!」


俺次から次に予定を入れてて大丈夫かな……。

まあ、大丈夫だろう。これを機に学校でも陽キャに!……多分無理です……。

だって女子高生怖い。同い年の女子に怖いなんて思ったことはほとんどなかったけどJKはみんな怖い。


もちろん先輩たちは別だよ?

くだらない一人コントを心の中で繰り広げているうちに電車がやってきて、俺たちはそれに乗り込んだ。

二駅過ぎると、由都が下りて行った。

もう一駅過ぎると七海先輩。

二人の静寂な時間。ただただ気まずい。


「唯花先輩?今日は楽しかったですか?」


周りの迷惑にならないくらいの声で話しかける。


「あぁ、うん!」

「よかったです。また体調崩してないか少し心配になっちゃいましたよ」

「今日は大丈夫だったよ」

「「………………」」


沈黙の時間ってやっぱり気まずい。いつもは普通に話せているのに二人きりになった瞬間、話題も出てこなくなるのはやめてほしい。

俺には少々コミュ力なるものが足りないんだから。もしあったら今頃友達たっぷりの楽しそうな学園生活を満喫できているはずだ。

ガタンゴトンという電車の走行音を聞きながら、無言のまま景色だけが過ぎ去っていく。

この状況を意識しないためにとにかく外の世界へ意識を追いやった。


「ねえ、凪くん……。私も今度一緒に遊びたい、な」

「もちろんいいですよ。中学の頃に一度だけ遊んだことあってそれっきりでしたもんね」


そう、俺たちは一度だけ過去の生徒会メンバーで遊びに行ったことがある。

中学生には少し遠出に感じる横浜まで出て、中華街へ行ったり、山下公園に行ったりして、その時を満喫した。


「じゃあ、今度は二人で横浜行きましょうか?」


すると唯花先輩はわかりやすく、うれしそうな表情をした。


「うん!行く!」


ということでさらに俺の予定が増えるのであった……。





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