第18話皆。掌の上
なかなか精神に来る時間帯。人からの視線は相変わらずあり、それでいて先輩たちのすることもエスカレートして、やはり高校生というべきか、話は恋バナに移り変わっていった。
「ねえ、唯花はまだ好きな人できないのぉ?」
「私に好きな人はいませんっ!」
唯花先輩はそう断言し、視線を彷徨わせている。
何か引っかかることでもあるのだろうか。
「気になってる人はいるけど……」
「あの唯花がついに陥落!?相手は……みんなわかってるか」
え、超気になるんですけど。
「桜庭先輩教えてくださいよ~」
「九重君はだめね。絶対」
すると周りのみんなもうんうんと首を縦に振る。この状況に疎外感を感じて少しだけ寂しくなった。
「まあまあ、そんなに落ち込まないで?ガールズトークに入れると思わないこと」
「はい……」
ガールズトークだったのか……。俺にはわからないことがまだ多いみたいだ。
「で、九重君は今好きな人とかいるの?」
「俺ですか?」
桜庭先輩が俺にそのことを聞いた瞬間にみんなスマホやらを触りだしてしまった。
俺の恋バナはそんなに興味ないってか?
それもそうだよな。だって、七海先輩と桜庭先輩以外は好き。または気になっている人がいると言っていたんだから。
その証拠に好きな人がいるといった、小鳥先輩と由都はスマホをいじり始めているし、唯花先輩は手鏡で自分の前髪を直している最中だった。
俺の話をまじまじと聞いてくれそうなのは、桜庭先輩と七海先輩だけ。
まあ、聞いてくれる人がいるだけいいことと思おう。ポジティブ思考。これ大事。
「俺は……どうなんですかね?自分でもわからないかもです」
「その人のことを好きって気持ちが?」
「まあ、言っちゃえばそんな感じです。気になってる人はいますよ」
「それは……?」
「言いませんよ?絶対言いませんからね?」
「まあ、今は?いいよ」
桜庭先輩はどこか含みのある言い方をする。ああ。きっと二人でご飯行くときに根掘り葉掘り聞かれるんだろうな。
まだ来ぬ未来を想像し、ため息を吐く俺がいた。
ほかのみんなはその発言に特に疑問を持つでもなく、自分のしたいことに没頭していた。
「どうなんですか……?この状況」
「ほんとにね。私と九重君と絢の三人だけでお人話ししてよっか。ほかの三人は自分のことで手一杯みたいだし」
「そうだね三人だけでね」
「あ、あの……」
「どうしたの由都ちゃん?」
「私も一緒にお話ししたいですっ!」
「もちろんいいよ」
まるで桜庭先輩の掌の上で由都が転がされているみたい。
「凛花は別にいいよね?」
「あっ……私も、一緒に話したい」
「そっか!もちろん大歓迎だよ!」
この流れだときっと唯花先輩も誘うんだろうな。
唯花先輩もさっきから桜庭先輩のほうをちらちらと確認しているみたいだし。
「それじゃあ何について話そっか?」
えっ。
「えっ!」
俺は心の中で。唯花先輩は口に出して驚きを露にした。
「どうしたの唯花?」
「そ、その私も一緒に、話したい」
「どうして?理由を教えてよ?」
うわ、桜庭先輩が悪魔に見えてきた。
唯花先輩をからかって弄んでいる。
「そ、その……独りぼっちは嫌なの!!」
唯花先輩は顔を赤くしてそんなことを叫んだ。
唯花先輩って意外と子供っぽいところあるんだなぁ。と内心で思いつつ、桜庭先輩だけは怒らせないようにと心で誓った。
俺の命がなくなる気がするからな。
かわいい唯花先輩も見れたことだし今日は満足だ。
そして時間の許す限りで、俺たち生徒会の談笑は続いた。
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