第17話羨みの連鎖
桜庭先輩以外の四人に早く決めろといったがなかなか決まらず五分以上かけて結局じゃんけんで決着をつけることとなった。
最初からそうしてろよ……。そう思ったことはみんなには内緒だ。
そして席順は俺の隣が唯花先輩と小鳥先輩だ対面しているのが由都でその隣が桜庭先輩と七海先輩。
一年生を二年生が挟む状況が出来上がっていた。そのことを意識すると威圧感が強く感じられる。先輩たちの雰囲気は緩いのに学年の壁が俺たちを押しつぶしていくようだ。
「じゃあ早速頼もっか」
すると唯花先輩がメニューを回してきてくれたので、それを小鳥先輩のほうへ流す。
「ありがと。一緒に見る?」
「いいんですか?ありがとうございます」
俺は小鳥先輩のほうに少し体を寄せて覗き見る。
すると体育祭後だというのにふわっとしたフローラルなにおいがした。
俺は寄るのををやめてそこで固まってしまった。
「ん?凪どうかした?」
「いや、何でもないです。小鳥先輩が見終わった後に俺も選びますね?」
「遠慮しなくてもいいんだよ?ほら」
小鳥先輩はこぶし二つ分くらいあった俺たちの間を一気に詰めてきて、足が触れ合ってしまうほどの距離になっていた。
やばいやばい。いいにおい。やわらかい。
俺の頭の中をどんどんと煩悩が支配していく。
こんなんじゃあメニューもまともに考えれないよ……。
とりあえず、小鳥先輩から離れるために策を講じようと思ったもののそれを考える余裕さえない。
「ねえねえ凪。これおいしそうじゃない?」
あまりにも無垢で楽しそうな顔をしているので、諦めて二人でメニューを見始めた。
頼んでから数分で料理が届いた。
ファミレスは頼んでから料理が出てくるのが早くていいな。
頼んだものはみんなで取り分けて食べる用のシーザーサラダ。
そして、俺はチーズインハンバーグを頼んだ。
ほかのみんなは俺と同じようにハンバーグを頼んだり、カルボナーラなどのパスタ類など各々が食べたいものを食べているといった感じだった。
すると七海先輩がじっと何かを見つめている。
視線を追ってみるとおそらく七海先輩が見ているのは俺のハンバーグ。
食べたいのだろうか。仕方ない。あげるとするか。
「七海先輩?これほしいんですか?」
「あっ……うん。ほしい……です」
なんで敬語……。
「いいですよ。はい、どうぞ」
俺は肉を丁寧に切り分けて、フォークで刺す。
すると七海先輩は口を開けて待っていた。
え、嘘でしょ……この人たちの前でそんなことしなしといけないの?
ハードルが高すぎるよ……。
でも七海先輩は有無を言わさない感じだし。
心を殺して、七海先輩の口にハンバーグを運んだ。
「あ~ん」
あ~んって言うなよ……。意識しちゃうじゃんか……。
心の中で羞恥に悶えながら、先輩の唾液が付いたであろうフォークを見つめた。
高校生にもなって、間接キスを恥ずかしいと思ってしまっている自分が恥ずかしいい。
実際恥ずかしいことではあるのかもしれないが、中学では回し飲みなんかよくしていたし、その時は恥ずかしいなんて思っていなかった。
相手が先輩だからってのもあるんだろうけど、想像以上の恥ずかしさであった。
「あの、凪……私も欲しいな?」
由都まで?
断ろうにも前例があるからとても断りずらい。由都のむける強い視線によってまたおれは「あ~ん」をする羽目になってしまった。
「あ~ん」
そして俺のハンバーグは由都の口に入っていく。
「うん。おいしい」
由都はにこっと笑顔を浮かべた。
「ねえ……凪」「凪くん」
今度は隣の二人だ。俺のとって悪いことを言われる気しかしない。
「「私もハンバーグ食べたい」」
この後二人に食べさせた後に俺は店内の人たちから憎悪と羨望の視線を向けられていることに気が付いた。
そして半分以上減ってしまったハンバーグ。
みんなの唾液が付着したフォーク。
明らかに俺の居場所は小さくなっていた。
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