第16話困難だらけ
他人の視線にさらされながら俺たちは太陽の沈みかけて暗くなった世界の中、ファミレスに向かっていく。
マジで恥ずかしい……。
この美少女軍団に混ざっている時点でこうなることは何となく予測できたが、思ったより人にたくさんの視線を向けられるのはやはり恥ずかしい。
駅のほうに向かうにつれて人の数も増えて、視線も多くなるのは必然だ。
「どうしたの凪?そんなに縮こまっちゃって」
「いや、むしろ由都たちは視線気にならないの?」
「ん〜あんまり普段と変わらないかな?」
怖い。普段からこんなたくさんの視線を浴びて平然としてられるなんて俺には絶対出来ないよ······。
「みんなすごいんだな……」
「多分今一番注目を集めてるのは凪くんだと思うけどね?」
え……?
周りの人たちの視線を見ていくと、この五人の中の誰かを見たのちに必ずと言っていいほど俺に視線を向けていく。
これだけ美人な人たちと一緒に歩いているのは誰だってなるんだろう。
そして俺と視線が合った人たちは俺をにらんでくる。
確かにこの中に混ざっていられるのはうれしいけど、対価が大きすぎる。
俺のライフはもうほとんど残っていないよ……。
俺の心がそんな状況になっていることにみんなが気が付くはずもなく、足をどんどん進めていた。
視線は気にしないようにしよう。俺ができる唯一の対策。
彼女たちと離れることを除いて……。
そんなことしたら本末転倒だもんな。
打ち上げをする目標的なものを果たせなくなる。
せっかく誘ってもらったのにそれは残念だ。だからこの時間だけは精一杯他からの視線を意識しないようにしよう。
そう念じて、ほぼ無心となった俺。
今はただみんなについて行くだけの機械だ。
何も気にする必要はない。
そして気づけばファミレスの前までついていた。
「やっと着いたね~凪?おーい」
「あ、はい。なんですか?小鳥先輩?」
「いや、なんかぼーっとしてたから大丈夫かなと思って」
「はい。大丈夫です。心を殺していただけなので」
「ふふっ。そう?困った事があれば言ってね?」
「ありがとうございます」
軽く一礼。親切な先輩が一人いるだけで世界が違く感じられる。ほかの四人はこの生徒会で一緒に食事ができるということを待ち遠しく思っているかのように目を輝かせてた。
「じゃあ、入ろう!」
案内されると次に俺たちが直面したのは席順についてだった。
椅子が三つ。ソファー席も三つ。好きなほうに座ればいいのに、なぜか、俺と桜庭先輩以外の四人は神妙な顔つきをしながら、ソファー席のほうをじっと見つめていた。
座りたいのかな?なら譲るとしよう。
「桜庭先輩、俺たちは椅子のほうで大丈夫ですよね?」
「ああ、うん。じゃあ座ろっか」
俺が向かっていくのは三つあるうちの一番右の椅子。
でも一向にその椅子との距離は縮まらなかった。
「唯花先輩……なんで引っ張るんですか?」
「凪くんはソファーのほうに座るんだ絶対に」
「別に俺は椅子でいいので先輩とか由都とかが使っていいですよ」
そういうと何を言っているんだ見たいな顔をされた。
えぇ……俺何か言っちゃダメなことでも言った?
「じゃあ俺はソファー席でいいので早く決めてくださいね」
「それは任せてくれて構わないよ」
若干頼りないが、まあ任せることにしよう。
俺はソファーのほうに足を進め、ちょっと堅めのそれに腰を下ろした。
「九重君も災難だねぇ~」
桜庭先輩はみんなの様子を面白そうに眺めながらそう言う。
「本当ですよ……ここに来るまでも。ここに来てからも」
ちょっと同性の友達が欲しいなと思った。
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