第13話お昼は一緒に

俺は学年競技のハリケーンを終えて、お昼の時間を迎えていた。

すると由都からLINEの通知が届く。


『お昼。教室で一緒に食べるよ!忘れてないよね?』


危ない危ない。忘れてた……。

けどそれを書きはしない。


『忘れてないよ。お昼持っていくね』


顔が見られなくていいことに、少しだけほっとする。

俺は歩調を速めて、教室へ足を進めた。



「おまたせ」

「も~凪遅いよ~」

「ごめんごめん。おなか減ったでしょ?食べよ?」

「うん、いただきまーす」


由都が手を合わせて可愛げに小さくお辞儀をする。

すると、青色のハチマキが目に入った。


「由都は青組か。誕生日はいつなの?」

「私は八月十二日だよ。凪は?」

「俺は十月二十二日だよ。由都は夏休みかぁ。一緒にどこか行くか?」

「行く!」


元気のいい返事が返ってくる。


「そっかぁ、じゃあどこ行くか考えないとな」

「楽しみにしてるね!」


そんな感じでプレッシャーをかけられると余計に緊張してしまう。


「そんなに期待しないで待っててね?」

「やだ、期待して待ってるね?」


由都は無垢な笑顔を浮かべ、期待のまなざしを一直線に向けてきているような気がする。


「わかったよ……できる限りのおもてなしをさせてもらうよ」

「やった!」


それからは体育祭の話だったり、生徒会の仕事の話をして時間をつぶした。

午後の一番初めには、応援団による、パフォーマンスがあるらしいのでそれを一緒に見ようという事になった。

パフォーマンスの始まる十分前を伝えるアナウンスがくる。


「いこっか?」

「おう」


そして俺たちは教室のドアを開けると熱気が急に入ってきた。


「なんかもわっとするね」

「そうだな……普通に暑苦しい」


この中を午後の間ずっと過ごすのかと考えると嫌な予感しかしない。

そんなことを考えてると、だんだんとこクーラーの効いた部屋から出られなくなる気がして思い切って一歩を踏み出した。

すると案の定というべきか熱風が俺の身体を襲った。


「うげぇ」


俺の口からはそんな声が漏れた。


「熱がってても仕方ないし早く外にいこっか」

「そうだな」


外に出ても暑さは増す一方であったが、一風変わった応援団の衣装を見てどこか心が高鳴っていた。


「これから応援団によるパフォーマンスが始まります。赤組の応援団の方は入場口にお集まりください」


すると赤い衣装を身に纏った応援団の人たちがぞろぞろと入場口へ向かっていくのが見えた。

そして明らかに赤に染まった入場口が目に入る。


「いくぞぉぉぉぉ!!!!」

「「「おおおおおおお!!!!!」」」


その掛け声とともに応援団が走り込んで綺麗に並んで、流れ始めた音楽とともに踊り始めた。


「すごいね……」


由都は隣でそんな感想をぽろっとこぼす。

他の人も皆応援に目を奪われていた。

俺もあまりのクオリティの高さにたくさんの練習の跡を感じた。

それから赤組のパフォーマンスを終えると、青組、緑組、白組とそれぞれ完成度の高い応援を見せられて、どことない高揚感が出てきていた。


「すごかったね……」

「あぁ……ほんとにすごかったなぁ」


そしてパフォーマンスが終わった後は俺の個人競技である、借り物競争がある。

アナウンスも掛かっているので急いで向かおうと思い身体を入場口の方へ向けた。


「行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」


別の色の人に見送られるというのは実に変な感じではあったが、これはこれでいいなとも思った。






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