第14話借り物競争

入場口に集まると応援団の人たちを待つ時間が出来る。

衣装を着替える手間もあるのでなかなか集まらず十分ほど経ってから入場する。

どのような借り物があるのだろうか。

人を連れてきて系は厳しいな……

まあそれも一走目の人で明らかになるだろう。

そして程なくして、ピストルが鳴った。

そして無造作に置かれた紙を拾っていく。

それを見た瞬間、皆観客席の方へ走っていった。


もしかして、全部人を連れてこい系?

俺には少々厳しいな……

そして次々とゴールインを果たしていく。

そしてお題が発表される。


「え~眼鏡をかけている人!」


これならまあ……


「仲のいい異性!」


これは公開処刑すぎる……


「赤い靴を履いている人!」


これでも大丈夫だな。

そんな感じで外見の特徴だったりのお題がほとんどだった。

そして俺の番がやってきてしまう。

もう適当でいいや……

変に迷うことを放棄して、俺はピストルと同時に走り始めた。

そして適当に足元に落ちている紙を拾った。


『頭のいい人』


すると俺の頭に浮かんだ人がいる。

そんなの桜庭先輩以外いないだろ。

桜庭先輩を探そうとして首を振る。

白組の中に一人で入っていくのはなかなかにきついがその中に桜庭先輩を見つけてしまったのだから仕方がないだろう。


「桜庭先輩!!」


桜庭先輩は自分の事を指さして首傾げた。

俺がうなずくと、桜庭先輩は前に出てきてくれた。


「先輩が借り物なんでついてきてください」

「わ、わかった」


俺は桜庭先輩の手を無意識ながらに手を引いてゴールまで引っ張っていった。


「え~頭のいい人!これも大丈夫ですね!」


すごいな。しっかり頭のいい人で通じるなんて……


「びっくりしたなぁ。いきなり手を引かないでよ」

「すいません……」

「まあ別チームなのについてきてあげたんだから何かあるとは思ってるよ?」

「な、何かとは何ですか」

「ごはんとか放課後おごってくれると嬉しいなぁ」

「仕方ないですね……いいですよ。ていうか生徒会でどっか行こうって話になってませんでした?」

「そういえばそうだったね……じゃあ別日で!」

「結局おごるんですね。分かりましたいいですよ」

「言質取ったからね!」


桜庭先輩は嬉しそうに目を薄く広げた。


「じゃあね!また放課後にっ!」

「はい。ありがとうございました」


順位は二番。まあ及第点だろう。

そして、適当に座って待っていると、手を引かれた。


「七海先輩?どうしたんですか?」

「凪くんが私の借り物!」


そういう事か。

どういうお題なんだろう。

俺は七海先輩に手を引かれながら、ゴールに向かって走っていく。


「靴脱がないでくださいね」

「脱ごうとして脱いでるんじゃないからぁ」


そんな軽口を叩きながらゴールテープを切る。


「お題は、後輩または先輩!!これも大丈夫ですね!」

「七海先輩大躍進じゃないですか一位ですよ」

「そうでしょ!見直した?」

「少しだけ」


すると七海先輩はうなだれる。


「少しだけかぁ~」

「嘘です。結構見直しましたよ。ていうかしっかり働いてるの見てましたからそん

なにひどい印象も持ってないですよ。あれはネタです」


「そうなんだぁ~よかったぁ~」


そして二人でトラックの内側に入ろうと歩き始めた。


「あっ!」


七海先輩は小石につまずいて転んでいた。


「なにしてるんですか……ちょっと俺まで恥ずかしくなってきました」

「そんなこと言わないでよぉ~」


やっぱり七海先輩がドジな印象は抜けなかった。



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