第11話始まりを飾るのは

軽い集会を終えると、生徒がぞろぞろと校舎から出てきていた。

体育祭が楽しみでどこか嬉しそうな顔を浮かべている者。

暑さとこの行事が億劫なのか嫌そうな顔をしている者。

その様子は様々である。


俺は運動はまあまあ得意なほうだから、あまり体育祭を嫌なものだと思った事はないが、運動が嫌いだったり苦手だと嫌なイベントだろう。

俺は同じチームだった小鳥先輩と七海先輩とともに応援席へ戻り、たくさんの人が校庭に入ってくる様を眺めていた。


「前まではあんなに人が多いところを歩いてきてたんだね......」


七海先輩が少しおびえたような声音で言う。


「そうですね......あの中めっちゃ暑そうです......」


その人ごみの中には方のところまで袖をまくってる人や額に汗をうっすらと浮かべている人もいる。

見ているだけでこっちまで暑くなってきそうだ。

俺はテントの陰に隠れて、日差しから身を守る。


でも、暑さだけはしのげない。

水筒の水を飲んでも、プログラムの書かれた紙で自分を扇いでも一時的にしか変わらず、数分もすればすぐに暑さは戻って来るのに加えて、だんだんと人が集まってきて人口密度も高くなる。


すると開会式を始めるとアナウンスがかかり、俺はテントの外に出た。

ゆっくりと歩きながら校庭の中央に向かっていくと、別のテントから桜庭先輩が出てくるが見えた。


「桜庭先輩。おはようございます。白組ですか。お互い頑張りましょうね」

「おー!おはよ。九重くんは緑か。緑には確か絢がいたから白の勝ちだねっ」


皆になめられてるってどんだけだよ......

本格的に心配になってきた......

七海先輩が戦犯にならないように心から祈っておこう。


「それじゃあ、またあとで」

「うん。絶対負けないからね」

「こっちも負けませんよ」


開会式前から若干の火花を散らして俺たちはそれぞれの色の列に分かれた。

数分もすれば、だいたいの生徒がテントから出てきて、やがて開会式が始まった。


「これから第六十二回陽北祭体育部門の開会式を始めます」


そして合図とともに礼をする。

そこからは長々しい話の始まりだ。

来賓紹介や校長の話、体育祭を行う上での注意事項を二十分ほどされる。

注意事項で熱中症には気を付けましょうと言っていたが、もう熱中症になりそうだ。

周囲を見ても暑さからかうつむいてる生徒がちらほらとみられる。


だが、そんな辛い時間ももう終わりで残すは選手宣誓。

これだけは、ほとんどの人が顔をあげてみていた。

やはり、先生とかの話よりも生徒がやっている事の方に興味が行くのはなんとなくわかるものがある。

そして、選手宣誓を終えると皆ぞろぞろと自分の席へ戻っていった。


ラジオ体操のような準備運動は各自で行うような形で進んでいくらしい。

そして最初にあるのは80M走。

体育祭の最初を飾るのはやっぱり徒競走だ。

騎馬戦とかの競技やダンスなどもあるが、一番盛り上がるのはリレーや徒競走などの走る系だと思う。

軽い準備運動を終えた生徒が一斉に入場口へ向かい始める。

人数確認を終えたのか、さっきまで座っていた走者が一斉に立ち、洋楽が流れると同時に中にゆっくりとしたスピードで入ってきた。

そして第一走者以外は座り、曲も止まって、そわそわとした空気が校庭全体に流れていく。


「よーい」


その声がすると、走者はスタンディングスタートの体制を取り、先生はピストルを空に向けた。


「バンッ!!!」


その音とともに一斉に走り出した。




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