第7話休暇

 定期テストも終わり段々と皆の意識は体育祭へと向いてくる。

 段々と近づくにつれ生徒会も忙しさを増してくる。

 だが、今日だけはその忙しさは微塵もない。

 久々の休みが与えられたのだ。

 まだ放課後にもなっていないが、それがなくなるというだけで俺のモチベーションはただただうなぎのぼりしていく。

 そして、今は四時限目だ。

 それもあと約五分。


 一つの楽園である休み。昼休みがやってくる。

 ただ、一緒に食べる人がいない。

 部活もろくにやっていない俺は、クラスに友達という存在がいなかった。

 しいて言うなら中学からの友達が何人かいるが、すごい親しいというわけでもない。

 そこだけが俺の学校生活における難点である。


 そんなことを考えていると、五分なんて一瞬で過ぎ去っていて、授業は終わっていた。

 用を足しにトイレに向かっていると、廊下の奥の方から由都さんが走ってきているのが見えた。


「凪くん、お昼ごはん一緒に食べない?」


 俺の友達不足を解消させてくれる天使はここにいたようだ。


「もちろん!由都さんはお弁当?」

「そうだよ!!凪くんも?」

「うん。それじゃあ、生徒会室まで行くのめんどくさいし、そこの空き教室で食べよっか?」

「うん!」


 俺はトイレに行ってから、教室に戻り、弁当をもって空き教室に向かう。

 由都さんはすでに椅子に座って待っていて、俺も対にされた椅子に座った。


「今日、生徒会休みだね」

「ほんとに久々だな~」

「最近大変だったもんね......でさでさ凪くん?」

「ん?なに?」

「今日って暇だよね?」

「暇だけど......」

「帰りにどこか寄ったりして遊びにいかない?定期テストも終わったことだし!」

「分かった。じゃあ放課後遊びに行こう!」

「よかったぁ〜もしかしたら凪くん友達いっぱいいて、既に予定埋まってると思ってたからぁ」

「俺、全然友達いないよ?むしろこんなことに誘ってくれるのなんて由都さんくらいだよ?」

「そうなの?わたしも全然友達いないんだよね......」


 意外だった。由都さんくらい綺麗なら普通に沢山友達がいるものだと思っていたから......


「そうなんだ?じゃあ仲間だね」

「な、仲間......うんっ!そうだね!」


 放課後に天使との予定が決まり舞い上がる俺の気分。

 それに合わせて、俺の食べるスピードも早くなっていった。

 長くて短い五、六時間目を終えて、俺は荷物をまとめて、昇降口に向かう。

 そして一、二分待つと昇降口に由都さんが現れた。

 そして彼女に手を振る。

 すると由都さんも手を振り返してくれて、そして下駄箱を開くと少しだけ曇った表情をした。

 そして、下駄箱の中から靴ではなく、一通の手紙が出てきた。

 それをカバンにしまって、ぎこちない笑顔を浮かべながら走ってきた。


「その手紙って?」

「多分ラブレター......」

「へぇ〜凄いね?」

「ありがと......」


 由都さんの表情はやっぱり暗い。


「ラブレター嫌なの?」

「私、もう好きな人いるので......」


 それは誰だろうと邪な考えを抱いてしまう。

 彼女は真剣に悩んでいるのに。

 せめて、彼女の暗い表情を明るくしようと心に決めて、俺は由都さんに言った。


「ほら!せっかくの休みだから沢山遊び尽くそう!由都!」

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