閑話

ヘイズ国北端より約250キロメートル

ジグの森 樹上での会話


「……なあ、すげえ話変わって申し訳ないんだけどさ」

「何ですかい」

「ベルちゃんと君って、今の時点でどういう関係なんだい?」

「……どうした?急に」

「いや、特に深い意味があるわけじゃない。

単にふと気になっただけで」

「そう……。

……まあ、別に悪くはないと信じたい、って感じ?」

「えらく中途半端な答えだねえ」

「悪かったね。自分でもよくわかっていないもんで」

「とかなんとか言っちゃってー。

えっちいことの1度や2度はもうしてんじゃないの?」

「えっ……!?は?何言ってんの?

んなもんあるわけないだろ?」

「ねえの?」

「ねえよ」

「キスは?」

「ねえよ」

「……手を繋いだことは?」

「ねえよ」

「本当に?」

「だからねえっつってんだろ。煽りか?」

「いや、ごめん、そんなつもりは……。

……それより、なんか、君たち進展してなさすぎじゃない?

確か何ヶ月か一緒に住んでたんだろ?」

「住まわせてもらってた、というほうが正しいけどね」

「ベルちゃんのこと好きじゃないの?」

「いや……そりゃ、好きじゃないって言うと嘘になるわな」

「別に嫌われてるわけでもないんだろ?」

「……多分」

「じゃあなんで」

「あのなあ、簡単に言うけど……」

「君が難しく考えすぎなんだよ。

思い悩んでないで、1回素直になっちゃえば楽しいことばっかりだぜ?

想像してみろよ、例えば……そうだな。

陳腐な発想だけど……こう、あの白い肌を紅潮させながら、息遣いも荒く必死になって君を求めるあのコの姿とか……」

「生々しい妄想をさせるんじゃない。

明日から直視できなくなるだろ」

「あはは、ごめんごめん」

「というか、さっきから人を小馬鹿にしたように話してるけどさ、かく言う勇者殿はどうなのさ?

過ごした時間ならそっちの方が断然長いだろうに……その、したことあんのかよ?」

「……あるよ」

「あんの!?」

「ちょっと、声がでかいよ。

みんな起きちゃうだろ」

「あっ、ごめん……え、い、いつ?」

「初めては……大体1年ぐらい前……かな」

「……どう、だった?」

「どうだった?

……うーん、なんつーか、すごかった?」

「すごかった、ねえ……」

「……何なら詳しく話したげよっか?」

「いや、丁重にお断りしておくよ。

まともに見れる人をこれ以上減らしたくはないから」

「ふーん……。

なんか俺としては、別にそんなに抵抗を感じるべきことでもないと思うんだけどな。

好きなら好きって言って、それが一致すれば仲良くなって、エッチなこともする……。

これって自然なことじゃん?

君に限った話じゃないけど、そういう変に恥ずかしがる感覚は俺にはよくわかんないや」

「そう考えられるメンタルがすごいよ。

ぼくにはまずできない……。

……でもまあ、言われてみれば、確かにそう複雑なことでもないのかもね」

「くっついてみる気になった?」

「それとこれとは話が別さ。

今はこのままでいいし、もしかしたらこのままでいるのが一番なのかもしれないからね。

……とにかく、しばらくはぼくのやりたいようにやらせてもらうとするよ。

じゃ、おやすみ」

「おつかれさん」

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