第50話 それぞれのバレンタイン

 ——時枝と穂奈美の場合——穂奈美視点。


「穂奈美! バレンタインどうする?」


「どうするって何? 好きな人でも、出来た?」


「す、す、す、好きな人なんて居るわけ!?」


 知ってる……でも、


「音無くん?」


 顔を真っ赤にする時枝、その感情が何か分かってないだけだよね。


 ……分かりやすい。


「ほら、師匠にはいつも世話になってるから、何かお返ししたいんだだよ! ……でも、ほら」


「衣織さんに、気使ってるの?」


「ま……まあ」


「音無くんと、どうにかなりたいの?」


「そ、そ、そ、そんな事あるわけないじぇ! 衣織さんと幸せになって欲しいと思ってるし!」


 ないじぇ……って、テンパリっぷりが、可愛い。


「なら、いいんじゃない」


「え……いいの?」


「うん、窪田先輩もそんなこと気にしないと思う」


 そんなの、今更だしね。


「私は、あげるよ」


「な、な、な、な、て、て、、て、て、て、手作りぃぃぃぃぃ!」


 違うし、声裏返ってるし……。


「そんなこと、一言もいっていなのだけど」


「そ、そうだよにゃ! あははははっ!」


 にゃ……って。時枝は手作りしたいのね。……まあ、音無くんも鈍いし、大丈夫か。


「うーん、でも折角だから、一緒に作る?」


「作る! 絶対作る! 今すぐ作る!」


 時枝……めんどくさいけど可愛い子。




 ——凛と愛夏の場合——愛夏視点。


「凛、バレンタインどするの?」


「どうもしない!」


「そ……即答だね……」


「あげる相手いねーし」


「鳴にはあげないの?」


「あげない! なんであんな奴に!」


 おや……なんか不機嫌になった?


「愛夏はどうなんだよ? 誰かあげるのか?」


「ううん……今年は誰にもあげないかな」


「兄貴にも?」


「さすがに、私も今年は無理だよ」


「ふ〜ん、そんなもんなのか……身内と付き合うとやっぱ後も大変なんだな」


「身内?」


「だって、愛夏は、半分身内みたいなもんじゃん」


 半分身内か……考えたこともなかった。鳴もそう思ってたのかな?


「うちの、台所のことなら、いまだに愛夏が一番詳しいしな」


 それは確かに……音無家が、その辺、うと過ぎるだけな気もするけど。


「凛は、まだ料理とかしないの?」


「凛はやりたいんだけど、兄貴がやらせてくれないんだよ! 愛夏からも言ってやってくれよ!」


 あ……地雷だった、鳴ごめん。


「ねえ凛、友チョコしない?」


「何それ?」


「うんと……女子力大会みたいなもんかな?」


「えー、やだよ、絶対面倒くさいじゃん」


 とか言いながら、顔がほころんでる。


 ……凛もそんな年頃なんだね。


 って、同い年だけど……。




 ——衣織と結衣の場合——結衣視点。


「いいな〜衣織は本命がいて」


「何よ、結衣、いきなり」


「去年は仲間だったのにね! むしろ不参加だったかな?」


「は? なんの話?」


 うっ……これが彼氏が居る余裕ってやつか……なんか悔しい。


「バレンタインだよ!」


「あーっ、そう言えばそんな時期ね」


 マジ余裕じゃんか……まあ、彼氏が居てその彼氏も一途っちゃ一途だもんね。しかも同棲してるし。


「さすがに彼氏がいると余裕ね」


 衣織の表情が陰る。もしかして喧嘩でもした?


「その、彼氏の学期末試験のことですっかり忘れてたわ……」


 違ったみたいだ。そういや鳴は、賢そうでおバカだった。


「衣織が教えてあげたらいいじゃん」


「うん……なんかでも……私に頼らないで頑張るんだって、ちょっと不安よ……」


 うんうん、鳴も男の子だね。


「まあ、いんじゃない? 男の子だし、ずっと頼るのもいやなんじゃない」


「そうね……今回は大人しくしとく」


 なんだそれ……やっぱ、余裕か! 余裕ってやつなのか!


「じゃぁ、衣織はウチとチョコ頑張ろうか!」


「え、頑張るって、手作り?」


「もち!」


「えー、なにも準備してないのに……買い物いかないとだね」


 なんだかんだ言って乗り気な衣織だった。


 でも余裕は気にくわん!



 ***



 ——今年はたくさんのチョコをもらった。


 学期末試験のことで、全然バレンタイン気分じゃなかったけど、めっちゃ嬉しかった。


 みんな、ありがとう。


 勉強疲れの頭の疲れをチョコが癒してくれたおかげで、無事赤点は回避できました。


 これでアヤトとのギタークリニック、織りなす音のライブに集中できる。




 ————————


 【あとがき】


 幸せ者め!


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