第49話 大事なのは習慣です

 ここ最近、僕はとても忙しく過ごしている。


 織りなす音のライブ&作曲、ソメイヨシノのリハーサル、アヤトとのギタークリニック、


 そして……学期末試験。


 ……ぶっちゃけ僕は、勉強が苦手だ。しかも最近は音楽三昧で、それに拍車が掛かっている。


 いくら音楽の仕事が増えても、僕は学生。学生の本分は……勉強だ。


 さすがに、落第は無いとは思うけど……何とかしないと皆んなに迷惑をかけるかも知れない。


 ヤバいです。




 ——「習慣をつけるんだよ」


「習慣?」


 いつも衣織を頼ってばかりなので、同じDNAを持つ凛に相談してみた。


「んと、兄貴はな、ちょっと感覚の人すぎる。しかも音楽に極振りしているから、音楽以外の感覚も怪しい。味付けはバッチリなのに盛り付けが残念とか、人に好意を抱かせといて鈍感とか……まあ色々だ」


 ……なにか凄いダメだしされている気がする。


「習慣とそれに何の関係が……」

「大アリだよ!」


 食い気味かつ、ちょっと苛立つ凛。僕はそんな凛に少し気圧された。


「ごめん……よく分からない」


「ロジカルシンキングだよ」


「ロジカルシンキング?」


「そう、もっと論理的に考えてみたら、なんで音楽が得意で、何で勉強が得意じゃないか分かるんじゃないか? それと何で習慣が大事か」


 論理的……僕は自分で言うのもなんだけど、結構論理的思考を持っていると思うのだけど……。


「凛、僕って、結構論理的思考じゃない?」


「あ?」


 凛は文字通り、一言で僕を黙らせた。……威圧感、半端ない。


「あのな兄貴、兄貴は何で毎日ギターを弾いているんだ?」


「ギターは1日休むと、取り戻すのに時間がかかるから」


「勉強も同じだよ!」


「え……そうなの?」


「そうだよ! だから皆んな毎日ちょっとでも勉強してるんだよ」


「え……そうなの?」


「まさか……知らなかったのか?」


 当然知らなかった。


「うん……凛も毎日勉強してるのか」


「当たり前だ!」


 今日の凛の威圧感は本当に半端ない。


「毎日勉強してるから、勉強しないと気持ち悪くなる。もう習慣になってるんだよ。だから勉強することが苦痛じゃない。やらないとって自然に机に向かう。ギターの練習もそうだけど、習慣にすることが、上手くできる秘訣なんだよ」


 凛……絶対感情で行動するタイプだと思っていたけど、僕より全然論理的だった。

 

「まあ、いつもみたいに衣織さん頼って勉強教えてもらうって結論にならなかったのは、兄貴にしては良い判断だったよ」


「え……そうなの?」


「おい、何も考えずに凛に相談したのか」


「はい……同じDNAだし……何か解決の糸口もってるんじゃないかな……って」


 めっちゃ睨んでる……仁王様がいます! 我が家に仁王様がいます!


「はあ————————っ……」


 物凄い長いため息をつかれた。


「あのな兄貴、今付け焼き刃で勉強してもな、この問題は卒業するまでずっと付き纏う。根本的に解決しないといつか破綻するぞ?」


「え……僕に賢くなれってこと?」


「なあ、今の話聞いてたか? その頭に入ってるのはスポンジか!」


 今日の凛は本当に迫力が違う。


「とりあえず、毎日ちょっとでも勉強しろ。それを習慣にするんだよ」


「学期末までも毎日ちょっとでもいいの!」


「それは死ぬ気で頑張れ」


「はい……」


 ぶっちゃけ凛の言っていることは良くわからなかった。


 でも、これからもっと音楽で忙しくなる。今みたいにまとまって勉強に取れる時間もなくなるかも知れない。


 そうなる前に何とかしろって凛は言いたかったのだと思う。


 言葉は悪いけど、どストレートに僕にダメ出ししてくれる良い妹だ。


「んで、兄貴……また、やらかしたらしいな」


「え? 何を?」


「……もういいよ、それも何とかしないと、いつか取り返しのつかないことになるぞ」


 凛は呆れ顔だった。


 凛の言葉はなんか引っ掛かったけど、とりあえず、試験勉強を頑張ることにした。


 習慣か……。


 ちょっと頑張ってみるか!


 凛が僕のやる気スイッチを上手く押してくれた。



 ————————


 【あとがき】


 ギターは進歩してるんですけどね!


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