第33話 だらっとまったり
あのあと結局、衣織の部屋で眠ってしまった。
僕の隣でぐっすり眠る衣織。
マナー違反と思ったけど、唇を奪わせてもらった。
朝チュー……なんかいい!
そして起き上がりスマホを取ろうと思ったら、衣織にベッドに引き戻され、今度は僕が唇を奪われた。
「行儀の悪い子だね、鳴」
僕たちはこの後、何度もキスをして、起きるまでに、もう少し時間を要した。
——起きてまず、再生数をチェックした。
「どう? 伸びてる?」
「うーん、まあ普通かな」
ボチボチは伸びていたが、まだ普通の範囲だった。
起きたらバズってないかな……と密かに思っていた僕は甘かった。
まあ、年間で計画を立てて、きっちりやっていくつもりだったし……。
ここまでは想定の範囲内。
むしろ思っていたよりも動画のクオリティが高かったから、プラスになっているほどだ。
「ねえ鳴、今日は何か予定ある?」
今日の予定か……?
明日から学校だし……特には何も考えていなかった。
「何もないよ」
「じゃあさ、明日から学校だし、今日はだらっとイチャイチャして過ごさない?」
……だらっとイチャイチャ……なんか甘美的な響きだ。
「もちろん、凛ちゃんに迷惑かけない範囲でね」
大歓迎です。
「じゃぁとりあえず、お菓子買いに行こう! お菓子!」
「うん」
だらっと過ごすために準備をする。
なんか少し面白かった。
僕がだらっと過ごすと決めたら、買い物なんて絶対に行かない。
ご飯も食べず、本当にだらっと過ごすだけだからだ。
まあ、凛と住むようになってから、あいつの飯の支度をしなくちゃならないから、僕もご飯も食べずにだらっとってのは無くなったけど……。
衣織の部屋を出る前にもう一度濃厚なキスをして、出かけるための身支度を開始した。
僕は結構キスが好きだ。
キス魔かもしれない。
「兄貴たちどこかいくの?」
用意をしていたら凛に声をかけられた。
「ちょっとお菓子を買いにスーパーまで」
「凛もついていっていい?」
「もちろん」
凛の用意を待って、僕たちは出かけた。
3人でスーパーって実は初めて?
——女子だから甘いものが好きなんだろなと思っていたが、意外や意外、衣織は塩気の効いたスナック菓子ばかり選んでいた。
凛は普通に甘いものばかり選んでいた。
僕はバランスよく選んで、ちょっと無理する時用にラムネを買っておいた。音楽は地味に頭を使うから、脳が疲れていたらうまく演奏できない。
ラムネはそんな時のマストアイテムなのだ。
会計を済ませて外へ出たと同時に、佐倉さんからメッセージが入った。
『見たよ。凄くよかった。撮影した子誰? 紹介して』
と入っていた。
とりあえず、お礼を言って、鳥坂さんのSNSアカウントを教えておいた。
公式アカウントは佐倉さんにフォローされ、動画も拡散されていた。
もしかしてこれは来るんじゃないか! と思い。
スマホを手に取っていたけど、来る気配は無かった。
年単位できっちり計画を立ててとか言いながら、諦めきれない僕だった。
凛はそのまま愛夏の家にお邪魔すると言って、自分の買った分だけ持って別れた。
もしかして衣織と2人っきりになれるように、気を使ってくれたのだろうか。
まあ、とにかく僕たちは家に帰り予定通りだらっと過ごしていた。
今日は珍しく衣織からのスキンシップも多かった。
もしかしてこれは誘われているのだろうか。
ついに次のステップに進む日がきたのだろうか。
そんなことを考えれいると衣織から核心に迫る話があった。
「ねえ鳴はしたい?」
この質問何度目だろう……でも何度聞かれても答えは一つ!
「うん、したい」
「私もしたい、鳴としたい」
この返しははじめてだ……いつもなら『鳴ならいいよ』なんだが……なんかドッキっとしたし心にくるものがあった。
ついに衣織も意識するようになったってことだよね?
「でも、ここではできないね。いつ誰が帰ってくるかわからないもん。鳴の部屋に鍵がついても流石に落ち着かない……」
それはよく分かる。母さんとか鍵かかっててもなんとかして開けそうだし。
「こんど行こうね、ホテル」
「うん!」
これはまた、仕事を入れてもらって頑張るしかない。
「でも、無理はだめよ」
いつものように心が読まれた。
ちょうど、そのタイミングでスマホの通知音がなった。
きっとSNSだ。
いい雰囲気だし後で見ようと放っておくと、連続して通知音が鳴り出した。
SNSを確認すると佐倉さんが、さっきとは別にコメント付きで拡散してくれていた。
どうやらそれがバズったみたいだ。
『この子が作ったMV色んな意味でヤバい』
僕のスマホにもヤバいほど通知が来ていた。
もしかしてこれは……来たか!
僕は期待せずにはいられなかった。
————————
【あとがき】
有名人の拡散……ヤバいっすね!
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