第32話 ミュージックビデオ公開
SNSで『織りなす音』の公式アカウントを作った。
記念すべき初投稿はミュージックビデオだと皆んなで決めていた。
そして早速、鳥坂さんから頂いたデータをアップして記念すべき初投稿を行った。
しかし、反応は一切無かった。
とまあ、ここまでは想定内だ。
せっかくミュージックビデオを作ってもフォロワーがいないのでは、反応のしようがない。
当たり前のことだ。
ここからの勝負はSNSでフォロワーを増やすことだ。
フォロワーを増やすにはまず、自分からフォローすることだけど、手当たり次第フォローするのは避けた。
公式アカウントってのもあるし、思惑が見え見えなのもどうかと思ったからだ。
とりあえずは、僕たちの知る有名人のアカウントをフォローすることにした。
事務所の公式アカウント、学さん、ジャズシンガーで衣織のお母さんの
……皆んなすごいフォロワーの数だった。
この中の誰かがフォローを返してくれて、動画を拡散してくれたら、そこそこ伸びるのではないかという下心ありありではある。
そして大恩ある鳥坂さんのことも忘れずフォローしておいた。
でも、全くの他人頼みってわけでもない。
実はここ最近、僕はSNSへ動画の投稿を積極的に行っていた。
もちろん、織りなす音のプロモーションに繋がればと、思ってのことだ。
ソロギターの投稿が中心なのでフォロワーもギタリストが多い、その中で織りなす音の音源をアップしても、大きく受けることはないと思うが、それでもゼロから始めるよりは拡散される可能性が高いと踏んでいる。
そして僕のアカウントから織りなす音をフォローしておいた。
織りなす音、公式アカウントの記念すべき最初のフォロワーは僕だった。
公式アカウントを作ったことをメンバーに知らせ、みんなにもフォローしてもらった。
早速みんながフォローを返してくれた。
これでフォロワーは5人だと思っていたら6人だった。
鳥坂さんもフォローを返してくれていたみたいだ。
一通りの作業が終わったので衣織の部屋を訪ねた。
「お疲れ様、鳴」
衣織は早速僕の労をねぎらってくれた。まあ、ぽちぽちしただけだから、そんな大した作業はしていない。
「どうなるかな?」
SNSはそんなに甘いものではない、無名の僕たちがアカウントを作ったからと言ってそう簡単には伸びない。
「まあ、最初は厳しいと思うよ……年単位の計画を練って頑張ろう」
「やっぱりそうよね、皆んなやってる中で目に止まるようにするって大変だもんね」
全くもってその通りだ。
でも、今の僕があるのはSNSがあったからだ。
SNSで衣織の動画をみつけて、そのことがきっかけで今に至るのだから。
うん……そう言えばあれから結構経つけど、衣織のアカウントってどうなってるのだろう。
「衣織のアカウントって最近どうなの? フォロー増えた?」
「うんうん、結構増えたわよ。ほら」
衣織がフォローしているのは数えるほどだったけど、フォロワーは3万人を超えていた。
僕も結構増えたと思っていたけど、1万人に届かないぐらいだ。
衣織……すごい。
さっそく衣織にも織りなす音の動画を拡散してもらった。
——今更だけど……衣織が家に来てから、僕が衣織の部屋でこうやってゆっくりする機会はなかった。
いつも衣織が僕の部屋に足を運んでくれるからだ。
改めて衣織の部屋を見渡すと、窪田家の衣織の部屋と同じく。
ミニマリズム全開な衣織らしい部屋だ。そしてやっぱり、いい匂いだ。
「なにキョロキョロしてるの?」
早速、つっこまれた。
「いや、場所が変わっても衣織の部屋っぽいなと思って」
「だって私の部屋だもん」
確かに。
「ねえ鳴、おいで」
衣織がベッドに座り、両手を広げて僕を呼ぶ。
僕が近付いたところで衣織に抱きしめられ、衣織はそのままベッドに背中を預けた。
逆押し倒し? そんな感じだ。
なんかこういうスキンシップ……随分久しぶりな気がする。
「やっぱり、落ち着く」
「え……」
「こうやって、ぎゅっとしてるの」
僕も落ち着きます。
「ねえ、色々考えないといけないこと、まだまだあると思うけど、今日はゆっくりしよ?」
「うん」
なんか気ばかり焦っていて、ゆっくりすることが落ち着かないと感じることもあった。
でも、今はすごく落ち着く。
この後、僕たちは心ゆくまでラブラブちゅっちゅして明日への英気を養った。
これからが勝負だ。
————————
【あとがき】
休息も必要ですよね!
本作が気になる。応援してやってもいいぞって方は、
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