第20話 佐倉麻里亜

 朝、スマホを確認すると佐倉さんから返信があった。


『連絡ありがとう音無くん、早速だけど都合の良い日を教えて欲しい。私的には今日の17時ぐらいが良いと思うんだけど、どう? いいよね?』


 えーと……どういうこと?


 つか、なんか強引じゃね?


「どうしたの鳴」


「あ、起こしちゃった?」


「ううん、丁度起きるところだったから」


「おはよう」


 おはようと言えばもちろん、おはようのちゅーだ。


 何だろう……めちゃくちゃ幸せなんですけど!




 ——身支度を整えながら、衣織と凛に佐倉さんから返信が有ったことを話した。


 どこでどういう繋がりがあるか分からないから、会うべきだというのが二人の意見だ。


 僕も同意見だ。


 もしかしたら『織りなす音』のプロモーションにつながるかもしれない。


 さっそく佐倉さんに返信すると『学生だよね? 迎えにいくから学校教えて』と返信があった。


 迎えに来る……なんか悪いなと思ったけど、学園の情報を教えた。


『じゃあ、16時半から17時半の間で、時間厳守よ!』と返信があった。


 1時間も幅があって厳守の意味が僕には分からなかった。


 


 ——そんなわけで、部活を休むことになるから通学路で皆んなに事情を説明しておいた。


「師匠、ついにモデルデビューっすね!」


「いや、そんなモデルだなんて……」


「可能性は十分ある」


「そうよね、でないとわざわざ学校にまで来ないものね」


「鳴くん有名人になるんだね、サインもらっておかないと」


 モデル……考えたことも無かったからなんかこそばゆい。


「師匠うらやましいな」


 うらやましい? 時枝が? なんか意外だ。


「最近の音楽雑誌の表紙……あれ撮ってるのほとんど佐倉さんっすよ?」


 え……まじか。


「全然知らなかった」


「音無くん……佐倉さんのこと知ってる?」


「いや……テレビとか見ないし、実はあんまり」


「たしかに、部屋にこもりっきりだもんね」


「鳴くん、部屋にこもって何やってんの?」


「ギター弾いてます」


「師匠らしくていいっすね!」


 道すがら、時枝と穂奈美に佐倉さんのことを色々教えてもらった。


 聞けば聞くほど凄い人で、会う前からなんだか緊張してきた。





 ——そして放課後、校門に人だかりができていた。


 ……やっぱり……佐倉さんなんだろうな。


「よう、音無くん、時間通りだね、偉い偉い」


 やっぱり人だかりの原因は佐倉さんだった。


「また音無かよ」「なんであいつばっかり」


 人だかりのざわつきが、佐倉さんへの興味から僕への反感に変わった。


「うん? 君は同性に嫌われているのかね?」


 ど直球来た—————っ!


「いやあ、どうなんでしょう……まあ、色々ありまして」


「そっか、興味ない」


 満面の笑みで凄い酷いことを言われた気がした。


「じゃあ、いこうか」


 佐倉さんは校内に向かって歩き始めた。


「え、校内ですか?」


「そうだよ、校内だよ」


「え……」


「今から撮影だよ、撮影。1分1秒も無駄にできないだろ?」


 1分1秒も無駄にできないは理解できる。でも、色々端折はしょりすぎだし、いきなり撮影って言われても、僕心の準備が……つか、流石の佐倉さんも校内で勝手に撮影したら怒られるでしょ。


「あ、学園の許可は取ってあるから安心してね」


 ……もしかして、迎えに来るからじゃなくて、撮影許可を取るために学校名聞いたのか。


「よし、まずスタッフと機材を調達しよう。写真部に案内して」


「え、あ」


「早く、時間は有限だよ」


「はい!」


 なんだろう……既に、僕がスタッフみたいなんだけど。


 言われるがままに佐倉さんを写真部まで案内した。


 半芸能人である佐倉さんの突然の来校に、学園はプチパニックになり、皆んなぞろぞろと僕たちの後に付いてきた。


「よう、学生諸君いい写真とれているかね」


 ノックもせずに写真部部室に入っていく佐倉さん。


 事態を飲み込めていない部員たちは、パニックに陥っていた。


 佐倉さんは部員たちの写真を見て突然アドバイスをはじめた。面食らっていた部員たちだったが食い入るようにその話をきいていた。


 売れっ子で、一流のプロからアドバイスをいただける機会なんて滅多にない。


 この経験は部員たちにとって宝物になるだろう。


「よーし、今から撮影だ。アシスタントを募集する手伝ってくれるやつはいるか?」


 もちろん写真部全員が挙手した。


「じゃあ、皆んな交代で手伝ってくれ」


 これは写真部にとっては超サプライズだ。


「音無くん」


「はい」


「部活やってる?」


「まあ、一応」


「なんだ君は部活をサボってまで私と会いたかったのかね?」


「あはは」


「『あはは』じゃないよ。そこは会いたかったと言うんだよ。女心がわかってないね」


 地味に刺さる。


「じゃぁ行こう、音無くんの部活へ」


「へ」


「撮影だよ、撮影。折角だから部活のシーン撮らせてくれよ」


 僕の一存では決められないが……断ることもできなさそうだ。


「とりあえず行こう!」


 色んなことが突然過ぎて強引過ぎて、イマイチついていけていない。


 勝手な事をして、皆んなに怒られないか超心配な僕だった。

 


 ————————


 【あとがき】


 超強引!


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