第18話 外ロケ!
「え————っ!
今起こった出来事を皆んなに話し、名刺を鳥坂さんに見せたらこの反応だった。
「有名なの?」
「超有名です! 今一番売れっ子の若手カメラマンですよ! 美人だし! テレビにもよく出ていますよ!」
そんな凄い方に声を掛けていただいてビックリだ。
「これはチャンスですよ! 音無くん! 絶対に連絡するべきですよ!」
チャンスと言われても……女装だし。
「師匠がモデルデビューか……自慢できますね!」
時枝、だから女装だよ。
「嫉妬しちゃう」
穂奈美、だから女装だってば……。
「いいなぁ鳴くん、そんな有名な人に見初められて」
……女装です、詩織さん。
「いいんじゃない? 一度連絡してみれば?」
……い、衣織まで。
「連絡と言っても、受けるだけじゃないでしょ。正直に話せばいいんじゃない?」
確かに衣織の言う通りだ。もしかすると仕事関連でご一緒することもあるかもしれない。また連絡してみよう。
「これって、考えようによってはウチのメイクの腕が認められたってことだよね? なんか嬉しいな」
確かに結衣さんのメイク技術は凄い。鏡を見て自分が男だと分からなくなるほどに。
「さあ、今からは外ロケですよ! 皆さん! ゆっくりしてる時間はありませんよ!」
鳥坂さんの号令で外ロケが始まった。
——色んなシーンをとった。
某有名アーティストがやっていた、横断歩道を並んで歩くシーン。
公園の遊具で遊ぶシーン。
駅で待ち合わせているシーン。
みんなで手を繋いで飛び跳ねているシーン。
でも、ほとんど『織りなす音』用の撮影しかしていない。しかも女装で……色々不安になる僕だった。
「鳥坂さん、うちのミュージックビデオは女装無しなんですよね?」
「そうですよ」
なら、なんでこんなにも女装のシーンを撮影しているのだろうか。
「今している撮影は、学園祭のライブ用のやつですよ! ボク……個人的に作りたくてウズウズしてたんです! だから音無くんレンタルをお願いしたのです!」
「学園祭のライブを……個人的に?」
「公開するしないは、メンバーの皆さんの判断に任せますが、是非作りたいのです!」
目がキラキラしている。本気の目だ。
「男装のシーンは次回まとめて撮っちゃいましょう! 今日は女の子バージョンですよ!」
いや、逆です。女装です。僕は男の子です。
——今日の撮影はとてもスムーズだ。
皆んなも頑張っているが、ぶっちゃけ鳥坂さんのおかげだ。
スタジオでちらっと鳥坂さんのノートが見えた。
今日のタイムテーブルと絵コンテがびっしり書き込まれていた。
スタジオの予約もそうだが、今日の撮影の下見にも絶対きているはずだ。
きっと鳥坂さんは今回の撮影準備に膨大な時間を割いてくれているはずだ。
今回のミュージックビデオで使われる曲は4分弱だ。
今日の撮影だけでもほぼ1日仕事だ。
それにプラスして、鳥坂さんの準備時間、編集作業。
その4分弱のミュージックビデオを作るために掛かる時間はあまりにも膨大だ。
使う使わないは皆さんに任せると鳥坂さんは言っていたが、彼女の努力を考えると……たとえ女装でも使わない選択はない気がする。
『お疲れ様でした!』
そして日も暮れ始めたころ、今日の撮影は無事終了した。
「音無くん、これよかったら差し上げます」
鳥坂さんがくれたのは、今日の撮影用にタイムテーブルと絵コンテがびっしりと書き込まれたノートだった。
「これ……いいの?」
「はい、絵コンテ苦戦してるんですよね? よかったら参考にしてください」
「ありがとう!」
鳥坂さん……ヤバイひとだけど、いい人だ。
——駅に戻り、皆んなが化粧直しに行っている間、僕はひとりで荷物番をしていた。
事件はそこで起きた。
「あれ、彼女ひとり? ねえ、俺たちとカラオケ行こうよ」
人生で初めてナンパされてしまった。
あまりにもショックで何も言えなかった。
ナンパくんたちは、先に戻ってきた結衣さんがパパッと追っ払ってくれたんだけど……1日の最後にどっと疲れてしまった。
————————
【あとがき】
あははは……どんまい!
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