第17話 約束の日

 ついにこの日が来た。


『織りなす音』の方じゃなく、交換条件の鳥坂さんの動画撮影の日だ。


『織りなす音』のミュージックビデオ制作は3本の予定だ。


 1本は鳥坂さん企画で、残りの2本は僕たちから絵コンテを提出することになっている。


 だがその絵コンテ制作が難航しており、鳥坂さんをいつまでも待たせるのも悪いので、僕1日レンタルが先になった。



 メンバーの同行を鳥坂さんにお願いしようと思ったら、鳥坂さんの方からメンバーの同行をお願いされた。


『織りなす音』のミュージックビデオ用の撮影も同時に行いたいそうだ。


 そして、メイク係として結衣さんも駆り出された。


 衣織、詩織さん、時枝、穂奈美、結衣さん、鳥坂さん、そして僕。


 男1人に女6人。


 しかも皆んな可愛い。


 はたから見たら完全なハーレム主人公だ。


「いやあ、ついにこの日が来たね! 楽しみだね! レッツラゴーだね!」


 朝からテンション高めの鳥坂さん。鳥坂さんのテンションが高ければ高いほど僕は不安になる。



 ——鳥坂さんにレッツラゴーされた場所はフォトスタジオだった。


 個人的にいつも利用しているらしく、価格もとってもリーズナブルだった。



「鳥坂いつもこんなところ使ってるの?」


「そうだよ窪田、変にロケ回るよりいいが撮れることもあるしね」


「そうなんだ」


 今日借りたスタジオは、真っ白な部屋に黒のレザーのソファーが置いてあるだけの、とてもシンプルな部屋だった。他にも様々なシーンに応じた色んなタイプの部屋があるとのことだ。


 とてもこんな部屋、僕たちに用意できない。


 それが高校生でも手が届く、とってもリーズナブルな価格で提供されている。


 鳥坂さんの動画のクオリティが高い要因は、こういうところにもあるんだなと改めて感心した。


 それと同時に知っていると、知らないの差を感じた。


 僕はフォトスタジオがこんなに手軽だとは知らなかった。


「ねえ皆んな、ちゃんと着替え持ってきた?」


 鳥坂さんに指示されていたのは学祭の時のステージ衣装と制服だった。


 まあ、僕だけ謎に学祭のステージ衣装は2着ある。


「じゃ制服からいこうか! 時間がないからちゃっちゃと着替えてね!」


 ここのフォトスタジオの唯一の欠点は仕切りがなく更衣室もないことだ。


 だから、僕も一緒に着替えていいのかな?


 そんなことを考えていると皆んなから一斉に痛い視線が飛んできた。


「音無くん最低」


 僕の心を見透かした。穂奈美の言葉が胸に突き刺さった。


 僕は外に出て皆んなが着替え終わるのを待っていたが、僕が着替える時は誰も外に出てくれなかった。


 地味に恥ずかしいけど、6対1では絶対に勝てないので言葉を飲んだ。


 撮影はすごいペースで進んだ。


 鳥坂さんの指示が的確なのもあるが、皆んなの適応力もすごかった。


 いつもNG仲間の時枝もリテイク無しの一発OKだった。


 続いてステージ衣装バージョン。


 本来学園祭で着るはずだった衣装が初めて日の目を浴びた。


 


 ——そして、いよいよ女装の僕だ。


 鳥坂さんの目が今まで以上に真剣になった。


 まず着替えを済まし、メイクシーンから撮影することになった。


 これまでの撮影で行われなかったリハーサルも何度か行われた。


 というのも結衣さんが映り込まない、カメラの位置がなかなか決まらなかったからだ。


 鳥坂さんと結衣さんの間で熱い意見が交換されている。


 撮影シーンが女装なだけに、少しシュールに感じてしまった。


 そして撮影が始まり、いきなりNGが出た。


 詩織さんが僕の女装に食いつき、映り込んでしまったためだ。


 そういえば、詩織さんは僕の女装は初めてだった。


 詩織さんが目を輝かせ僕をずーっと見ていた。


 チラチラと視界に入る詩織さんを気にしないのが地味にキツかった。


 そしてなんとか、時間通りに撮影が終わった。


 この後は私服で、外ロケだ。



 皆んなが私服に着替えるのをスタジオの外で待っていると、カメラマン風の女性が僕に近づいてきた。


「あなた、可愛いわね、今度モデルやってみない?」


 名刺を手渡された。


「ちょっと今急ぐから、絶対にメッセージ送ってね」


 僕は女性としてスカウトされてしまった。


 

 ————————


 【あとがき】


 またまた意外な展開に!


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