第1話 1日のはじまり

 僕、音無鳴おとなしなるの1日のスタートにはハードモードとソフトモードがある。


 ちなみに今日はハードモード。


 それを決める基準は寝起きの刺激度だ。


 刺激の正体は双子の妹、りん


 夜中に凛が僕のベッドに潜り込み、朝起きると僕を抱き枕のようにして身体に絡みついているのだ。


 因みに僕は妹萌えじゃないし、凛もよく覚えていないらしい。


 凛がよく覚えていなくても、僕が妹萌えじゃなくても……僕は思春期だ。


 いくら妹でも、寝起きに年頃の女子の身体が絡みついていると、平静を保つのが大変だ。

 

 しかも凛は、出るところが程々に出ていて、引っ込むところはしっかり引っ込んでいるナイスバディだ。


 おまけにいい匂いもする。


 寝起きで敏感になっていてる僕は、このあらゆる刺激に耐えなくてはならないのだ。




 なにせ双子の妹だ……双子の妹に欲情するのと、普通の妹に欲情するのでは、意味合いが大きく異なる。


 理由は察して欲しい。




 でも……たまに誘惑に負けて、しれっとおっぱいを触ることがある。


「おい、ゲス兄貴……その手はなんだ」


「あ」


「『あ』じゃねーよ……なにしれっと触ってんだよ」


 まあ大概このようにバレてしまう。


「スミマセン……」


「本当に油断も隙もないな……衣織いおりさんに言いつけるぞ」


 いや……思春期の男の子のベッドに潜り込む君が悪いんだよ……とは言えず。


「ごめんなさい、勘弁してください」


 素直に謝る僕だった。


 僕は争いごとが大の苦手だ。喧嘩はもちろんのこと、口論すら自ら進んですることがない。


 ハードモードの朝は、大体こんな感じだ。


 また機会があれば、スーパーハードモードとソフトモードの紹介もしたいと思う。





 ——「じゃぁ兄貴先にいくぞ」


「うん、行ってらっしゃい」


 凛とは同じ学園に通っているのだが、登校は別々だ。


 凛は僕の元カノであり幼馴染の愛夏あいかと一緒に通っている。2人は子どもの頃からの親友で、3人ともクラスメイトだ。



 ——僕の方はというと、彼女の衣織いおりと待ち合わせてから、学園に通っている。


 いつも衣織は、約束の時間より少し早く、待ち合わせ場所に到着する。


 

 ……なのに今日は、時間になっても衣織が来ない。


 メッセージを入れても既読にならない。



 ……心配だ。



 何かあったのか……まさか交通事故?


 幸い衣織が待ち合わせ場所に来るまでの経路は把握している、僕はその経路を辿り衣織を迎えに行った。



 しばらく進むと外国人男性2人組と話している衣織を見つけた。


 僕はホッと胸をなでおろした。


「鳴、丁度良かった。この人達に何か聞かれてるんだけど……言葉がよく分からなくて」


 僕は子どもの頃から父さんと各国を回っていたので語学は達者だ。


「道でも尋ねてるの?」


 道を尋ねる? とんでもない。


 彼らは衣織をナンパしているのだ。


 争い事の嫌いな僕だがビシッと言ってやった。


「この娘は僕の彼女なんだ、そんなわけだから悪いな」と。


「ナンパだよ衣織、行こ」


「え、あ、そうだったの?」


 彼らは『ちぇっ仕方ねーな』みたいなポーズを取ったので、そのまま立ち去ろうとした。


 すると片方の男に凄い力で肩を掴まれた。


「おい、待てよ」「おい、やめとけって」


 もう1人の男は静止してくれているが、なんか収まりそうにない。


 男はさらに掴む力を強めた。


「痛っ」


 普通に痛い……そして怖い……僕は内心ビビりまくっている。


「テメーは、なに横からしゃしゃり出てきてんだよ」


 決してしゃしゃり出たわけじゃない。


 だって僕の彼女だもん。


「いや、そうじゃなくて、僕の彼女なんですけど……」


「それが何だって言うんだ!」


 男は激昂して殴りかかってきた。


 殴られた! と思った刹那、体が勝手に反応し、僕は男を一本背負いでノックアウトしていた。


「オーマイグッドネス!」もう1人の男が叫んだ。


「お2人さん、すまない、この通りだ。コイツが悪かったよ、勘弁してやってくれないか?」


 片割れの男が神妙な面持ちで謝罪してきた。これ以上揉めたくない僕としては、非常に助かる。


「いいですよ、彼を介抱してあげてください」


 ビビってるのがバレたくなかったので、声がうわずらないように、平静を保ちながら了承してやった。


 男たちはこの場を立ち去っていった。


 朝から心臓に悪い出来事だった。



「鳴って……時々計り知れないところがあるね」


「僕、柔道習ってたんだよ……あと母さんにも鍛えられて」


「そうだったね、ありがとう鳴」


 衣織は周りをキョロキョロし、人が居ないのを確認して「ちゅっ」唇と唇を重ねた。


 さっきと違う意味でドキドキが止まらなくなった。


「行きましょう」


 寝起きからドキドキしっぱなしで、僕の心臓はオーバーワークだ。

 


 ————————


 【あとがき】


 残念なのかハイスペックなのか分からない鳴でした!


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