第九の屍・下

 「店主、どうしてそのようなことになっているのか教えてはもらえまいか?」

 いつにない真剣な眼差しのロンド公爵の店主は奇異の目を向けながら口を開いた。

 「祈祷師きとうし鐙骨あぶみこつ砧骨きぬたこつ槌骨つちこつといえば、我々には有名な雨乞あまごいの道具なのですよ。確かにという意味だけでいけば、鐙骨あぶみこつ以外は何ら雨乞いとは関係のないです。しかしながら、3つあるには当然理由があります。槌骨つちこつですが、こちらは真逆の性質を持っています。つまり日照りを引き起こすというわけです。そして砧骨きぬたこつですがこれは両者の力を中和する働きがあります。ですので両者の中間に置くことで、天候を安定させる役割を持っています。…しかし今回のように1つでも遠くに離れてしまうと、その均衡きんこうが崩れ、あるところでは大雨に、またあるところでは日照りに見舞われるのですよ」

 店主は紅茶を一口すすると、めんどくさそうな顔で頭に?を浮かべた公爵にちらりと目を向ける。

 「まぁ、簡単に言えば三竦さんすくみの均衡きんこうが壊れて、大変なことになっている。そういう話ですよ」

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