第九の屍・上

 まったく、毎日雨とは嫌になる。せっかく整えた髪がびしょびしょに濡れてしまうではないか。

 誰に愚痴るでもなく、ロンド公爵は鏡に向かって髪をかき上げながら呟いていた。

 「最近確かにちょっとおかしいですね…」

 「て、店主!?おっほん。や、やはりそう思うか?」

 見られていたのが恥ずかしかったのか、ロンド侯爵は耳まで赤くしている。

 「えぇ、まぁ」

 店主は興味もなさそうに外を眺めていた。

 「店主!いつぞやはありがとうございました!」

 深々と頭を下げながら1人の農民がやってきた。

 農民にしては豊かな暮らしをしているのだろう、身なりが比較的整っている。

 「おや、やはりあなたでしたか。…しては?」

 「もちろん持っておりますとも!これには助けられましたからなぁ」

 そういって取り出されたのは小さな骨が1つ。

 「…祈祷師きとうし鐙骨あぶみこつしかお持ちでないようですね」

 「はたいして役にも立ちませんゆえ、仕方がのうございます」

 「…そうですか。では、あなたの村は今ごろ日照りで人が死んでいるでしょうね。あなたが砧骨きぬたこつ槌骨つちこつをともに持ち歩かなかったがために」

 

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