第4話 奇襲

 不穏な音でナギは目が覚めた。廊下が騒がしい。来て早々何があるのやら。刀を右手に部屋から滑り出してみると、丁度部屋の外にいたリラと目が合った。


「敵襲?」


 まさかなあ、と思って聞いたのだが、リラは無言で頷いた。そのまま歩いていく。ナギは後を追いながら、俺も行った方がいいか、と聞いた。


「当たり前。特に初期は人が多いほうがいい。にしてもよく気がついたな」

「人の足音には敏感なンだよ」

「もう少ししたら全体に放送されるはずだけど、その必要がなければボクたちだけで処理してしまえばいい。来襲しているのは高々40人程度だし、所詮は農民の寄せ集めだろう」


 とはいえ全戦闘員の人数としては相手が勝っているのである。こんなタイミングで俺の安眠を邪魔しやがって。ナギは苛立ちを募らせていた。

 リラの言う通り、建物の周りではもう、警備隊と敵の戦闘が始まっていた。目と鼻の先でやりあっている。ナギは俄かに肌が粟立つのを感じた。


「これもう参加していいのか?何か許可とか……」

「許可は要らない。人手が少なそうなところに行ってやらなきゃならない」


 リラはそう言って、日が落ちかけた西に走りだした。ナギは慌てて後を追った。敵陣に入り込んで腰からSAAを抜き、相手の鎌のような武器をかいくぐって眉間を撃ち抜くまで0.3秒といったところか。倒れる屍をナギが斬り伏して、そのままその体を踏み台に次の敵の腰を砕く。刀は屡鈍器になるのだ。リラはその間、遠方の敵も併せて6人を撃ちきっていた。リラの後方に敵を認めて、後ろだ、とナギが声をかけると、リラは肘を振りぬきそれに応える。肘鉄を食らって倒れる男の左肩から右わき腹にかけてナギが叩っ切り、ついでに右手から大きなベレッタを奪って、戦闘終了。軽く10人は倒しただろうか。


「いつもこうか?」

「こうやって急に来ることはあるがいつもは落ち着いて夕食も食べられる。今日は運が悪かったな―けど良いもの貰ったじゃないか」


 そうだな、とベレッタを指先で回しながらナギは答える。寝起きで空腹で戦う、しかも喧嘩でなくまともな戦闘なんて初めてなので些か不機嫌である。


「しかしこんな良いもの持ってて、どうして撃とうとしなかったんだろうな?」

「弾切れだろ」

「予備の弾は持ってねえのかよ」

「持ってないだろうな。奴らの農民に対する認識なんてそんなものだ。上手く取り込んでいいように使う。取り込まれているから、こっちは殺らなきゃならないのが厄介なところ。生かしておいて、支持基盤として使えればいいんだけど」


 いなくなったみたいだな、夕食だから食堂に案内するよ、とリラは血まみれのまま歩きだした。シャワーとか浴びねえのかよ、と文句をいいながらナギはその背中についていった。ああ、刀を拭かなきゃいけないな、と思った。

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