第2話 新参者

「ところであんたはなんて名前なんだ?」


ナギは前を歩く男に声をかけた。彼は振り返ることなく、リラ、とこたえた。男にしちゃ珍しい名前だなとうっすら思う。


「使ってる武器は?」

「コルト。SAAピースメーカー


古いの使ってやがる、ナギは肩を少しすくめた。日本刀使ってる人に言われたくないなんて言われそうで、口に出すのはやめておいた。

結局ゲリラ戦だから、と彼は言う。


「実戦に慣れているかどうかよりは、単純に強いかどうか、みたいなところだな。--喧嘩強い?」


そこそこ、とだけ答えておく。正直ここにいる戦闘員たちより強いという自信は、ナギにはなかった。あんたは、強そうだな。リラは聞こえていたようで、少し笑った。


「さあ、喧嘩らしい喧嘩はしたことないから。ただ格闘技はできる。できるし、嫌いじゃない」


短く切りそろえた髪は少し巻いているようだった。身長は170cmを少し超えたくらいだろうか。160cmに満たないナギから見れば羨ましい限りである。苗字はあるのか、と聞くと、リラは立ち止まった。部屋はここ、と振り向く。


「苗字?ああ、苗字は—覚えてないな。長らく使ってないから。君もないんだろ、苗字」

 

 ないに決まってら、ナギはまた肩をすくめた。苗字なんて、上流階級のものだ。勿論、いうまでもなく、ナギにはない。


「俺は誰と組むことになるんだ、ってか誰かと組むのか?全員一緒じゃないのか」

「大きな計画でなければ、一人や二人で行くこともある。基本単位は四・五人だな。どうやってチームを作っているのかは知らないけど、二人で組むなら大方ボクとじゃないかと思うぞ」


 リラはそう言って、ドアを開け、じゃあ夕食のときにでも食堂に案内するから、と言って歩いていってしまった。よろしくの一言も言いそびれたなとちょっと後悔した後、ナギは部屋に滑り込んだ。

 部屋はそこまで広くはなかった。ベッドと机と椅子、それと小さなクローゼットの中に銃の棚。まあ石の床じゃないから、寝転んで頭を床に打ち付けてもそんなに痛くはないわけだ。ベッドもなかなかふかふかしている。今までナギが住んだことがある場所の中でそこは、最も住み心地のよさそうな部屋だった。外も見える。晴れた空なんて久方ぶりだなと深呼吸した。

 落ち着くと思考が始まるものだが、ナギも先ほどのスカーレットについてふと考えた。考えたはいいが、分かるはずもなかった。


「初対面だもんな……」


目を伏せたスカーレットの顔が、どうもリラに似ている気がした。二人とも何かあるな、と思ったがつかの間、ナギはふかふかの布団に導かれ、眠りに落ちてしまった。

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