第4話 少年の受難

狐憑きとか、聞いたことはあるだろうか。

少し語弊もあるんだけど、これ、いわゆるお狐様が人の体を乗っ取ってる状態をいう。

まぁ、そんなお狐様もまた、多種多様。

世の中には、狐だけじゃなくて、蛇だとか、犬だとか、霊的な存在だとか、とにかくたくさんの憑き物と呼ばれているものがいる。

トウビョウ、通り悪魔、人狐、あげだしたらきりがない程度には。

彼らは、人と共生していたり、していなかったりするけれど、それらを総称して、俺の家系では、憑神様、と呼んでいる。

そしてまた、俺の家系のように、そういった憑き物様と共生、並びに共鳴、そしてまた使役せしめる家系は、憑渉(つきわたり)という。


そんな憑渉である久世新埜こと俺。

代々家業を継いでいる久世のお家の中でも、俺は特に特殊な体質で生まれてきたらしい。

何しろ俺は、普通の人間なら、一体で定員オーバー、の憑き物様を現在で六体。その身の内に抱えて平然としているからだ。

そんな俺を、幼なじみの一人、キリスト教に専心する教会の息子は畏敬と皮肉の念をこめてこう呼んだものだ。


ーノアの方舟、新埜様ー



まったくもって、笑えないジョークだった。

非常にタチが悪すぎて。


だってその言葉は、俺という存在を表すには尤もな、ぴたり賞だったんだから。


俺は今、最っ高に憂鬱だ。

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