第4話
――――他地域から流れてきた冒険者達の様子を何とも言えない表情を浮かべているのは、『トラキニア』を中心に活動している冒険者達だ
その冒険者達の座っているテーブルの上にあるお椀には、人参、たまねぎ、キノコやかぼちゃ、生でも食べられる野草が入った薄い塩スープだ
また、ステーキ肉の代わりに大皿に黒パンが小さく切り分けられて置かれていた
『トラキニア』を中心としている冒険者幾人かが、他地域から流れてきた冒険者達の食事を見て、血の気の引いた表情で立ち上がりトイレへと駆け込んでいく。
「今食っているステーキ肉や魚類の『真実』知ったらどう思う事やら」
口髭を生やしている冒険者が、トイレへと駆け込んで行った地元の冒険者達を
横目で見ながら呟く
「馬鹿な事は考えるなよ?
この世には知らなくて良い事ってものがあるんだ」
それに答えたのは、日焼けした冒険者だ
「んなぁ事はわかってる
他地域から流れてくる冒険者連中には、身体の調子が良くなる美味しい食事だと思わせていた方が何がと平和だ」
口髭を生やしている冒険者が、ぼそっと応えながら、薄い塩スープを匙ですくいながら口に運ぶ
―――迷宮都市『ウィンルム』近郊の鬱蒼とした森林内を軽装装備姿の
冒険者がある一定の目的地まで歩き進んでいた。
少年にも少女にも見える美しい中性的な貌は、凄絶な笑みを浮かべていた。
中性的な貌の冒険者の後を、一定間隔を空けて追跡している複数の人影があった。
人影達の服装は、一般市民のものではなかった。
ましてや、魔物やゴブリンが徘徊する森林内を好んで歩くのは、何かしらの目的がある一般市民ぐらいのものだ。
人影達の服装は、動きやすく軽装装備だ。
これだけ見れば、一攫千金目当ての冒険者に見える
だが、複数の人影全てが、闇夜よりも濃い漆黒の色で統一した軽装で統一している
服装は、動きやすく音の立たないように身体にぴったりと合っており、 両手を黒い革手袋で覆い、フード付きのマントを羽織っていた
さらに、跫音を消すためか靴の裏に毛皮を張りつけるという工夫もし、 フードから覗ける貌の所には、素顔を隠すためか仮面まで被っている。
もちろん、その仮面も黒で統一されていた。
複数の人影――4人組は、冒険者ではない
冒険者ギルドの冒険者ギルド職員だ。
それもただの冒険者ギルド職員ではなく、『汚れ仕事』専属冒険者ギルド職員だ。
各地域の『冒険者ギルド』には、『汚れ仕事』を行うギルド職員が必ず在籍して
いる。
『汚れ仕事』の主な内容は『冒険者ギルド』の掟を破り、『冒険者ギルド』の信用を著しく傷をつけた冒険者を粛清する事だ。
規定も別段守る事が難しい訳では決してない。
冒険者ギルド職員が、登録時に説明する注意事項だ
だが、残念ながらというべきが愚かな輩は少なからずも存在している。
規定を破った先に待っているのは――――血の粛清だ
破ったのが、貴族の関係者、正義の象徴でもある騎士、神の僕である司祭でも容赦はない。
過去に逆恨みなどで、『冒険者ギルド』に刃を向けて襲撃を企てた愚か者も
数多くいた。
だが、それらは人知れず咲き乱れる華の肥料となっている。
『冒険者ギルド』は、冒険者として登録する者に最低限の規定を守らせるために、
抹殺対象者がどんな厳重な警備で固めた貴族でも、どんなに人徳のある聖職者でも、ありとあらゆる手段を用いて実行する。
――『トラキニア』の『冒険者ギルド処刑人』には、ここ2年ほどもう一つ『仕事』が付け加えられている。
それが、この『ゴブリン狂い』の監視だ。
「もう2年も続けているが、これについて疑問に思う事も無くなってきている自分自身が怖い」
処刑人の1人が小さく呟く
「奇遇だ。俺もだ」
その問いに、別の処刑人が応える。
残りの2人は何も答えない。
最初に声を発した処刑人が何か言おうとした時、前方から醜悪な声と奇声が聞こえてきた
「・・・ゴブリンと見れば躊躇もないのか、あいつは」
最初に言葉を発した処刑人が呻く様に呟く
「小細工をするような奴じゃないだろ・・・」
問いに応えた処刑人が短く応えた
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