第37話 開演 元Fランク冒険者VS上級ドラゴン


握り拳を固めて思う。

こいつは正義の味方なんかじゃない。


歯を食いしばって思う。

こいつらは、力があるのに平気で人を見捨てるゲス野郎だ。


だけど俺だけは! 他の誰でもない俺だけは俺の理想を裏切らない!


誰に裏切られても、俺は俺を裏切りたくない!


殺意すら込めた視線で睨みつけると、俺は魂の底から吐き出した。



「冒険者なんて大嫌いだ! みんなは、俺が守る!」



「よく言ったよ孝也!」


 バシン、と手を鳴らして、春花が好戦的な笑みを浮かべた。


 戦乙女然とした美貌を輝かせながら、ストレージのポーチから、赤いアサルトスーツを引っ張り出した。


「今夜、プレゼントしようと思っていたんだけどね。ノエルのドラゴンボディの髪を編んで作った特別性だよ。防刃防弾耐熱耐冷魔力強化のフルコンボ! ボクとノエルからの贈り物さ!」


 準備の良さに、俺は微笑を漏らす。


「助かるぜ春花。でも、武器はどうする?」

「持ってきてるよ」


 即答するように、春花は俺のドラゴンハルバードを取り出した。


「もしも急遽試合に欠員が出てお客様の中に現役闘技者はおられませんか、て、展開になったら対応できるようにね」

「お前最高」


 頼もし過ぎるパートナーに、俺も好戦的な笑みを返した。


 ノエルが、肘を引いてくる。


「タカヤ、敵は空だから、わたしの背中に乗って欲しいのです」

「ああ、頼んだ」

「じゃあ行くよ二人とも!」

「「おう!」」


 鼻白む嵐山を置き去りにして、俺らは春花を先頭に、控室を飛び出した。



   ◆



 選手入場口へ続く通路からバトルフィールドへ出ると、ノエルが大きく跳んだ。


「久しぶりのドラゴン形態、滾るのです!」


 次の瞬間、ノエルの目の前に巨大な光の円が現れた。円は内側に幾何学模様を孕んだ、魔法陣だった。


 ノエルが魔法陣をくぐった。


 すると、反対側から出てきたのは、ノエルではなかった。


 桜色の装甲と、紅蓮の髪を生やしたアーマードラゴンが、バトルフィールドに顕現していた。


 全長は20メートルはあるだろう。


 体格では、レオドレイクに見劣りしない印象を受けた。


「ではタカヤ、尻尾からどうぞです」


 人間形態と変わらない、可愛い声に促される。


 アサルトスーツに着替えた俺は、上り階段を駆け上がるように、ノエルの長い尾から背中へわたり、首の根元に仁王立った。


 まさか、ドラゴンスレイヤーを目指していた俺が、ドラゴンライダーになるとはな。


 自分の運命を笑いながら振り返る。


「待っていろよ春花。必ずレオドレイクを倒してくるからな!」

「ああ、待っているよ孝也! キミが凱旋するのをね!」


 無敵の笑顔で親指を二本立て、春花は俺を送り出してくれた。


 彼女の声と笑顔に勇気を貰うと、ノエルの背中から左右に伸びた雄大な翼が上下に羽ばたいた。


 突風が吹き荒れ、芝生が暴れ回り、春花が顔をかばうように腕をかざした。


 レオドレイクを倒す。

 街を救う。

 そして春花のもとへ帰る。

 様々な想いを両手に握りしめながら、俺はノエルと共に空へと飛び立った。




 上空へたどり着き、闘技場の壁を乗り越えると、はるか遠くのビル群に、黒い点のようなものが見えた。


 肉体強化魔法で視力を強化すると、レオドレイクが火球で地上に爆撃をしているところだった。


 周囲には戦闘機の影は無い。


 四機の戦闘ヘリが、攻めあぐねている様子だった。


「急ぐぞノエル!」

「はい、振り落とされないようにお願いしますよ」


 ノエルの翼が着火した。


 それを合図に、翼全体から、背後に強烈なジェット噴射が噴き上がった。


 ヴォルケーノタイプの力を持つノエルならではの、瞬間加速が、俺の体に猛烈なGをかけてくる。


 向かい風が空気の壁のように顔を叩き、髪が背後に暴れた。


 肉体強化魔法がなければ、一瞬で後ろに薙ぎ倒されていただろう。


 やや、腰を落とし、耐えていると、10秒もしないうちに、レオドレイクの輪郭を、はっきりと捉えることができた。


 レオドレイクが、スクランブル交差点に急降下する。


 その先にあったのは、横転した大型のバスだった。


 周りにはけが人がたくさんいて、すぐに逃げられる状況じゃなかった。


「ノエル!」

「はい! このまま突っ込みます! ハルバードを引っ掛けてください」


 言われるがまま、俺はハルバードの鉤爪部分を、鎧の装甲じみた体表に引っ掛けた。


 刹那。ノエルの翼が炸裂した。


 指向性の爆轟と言っても差し支えない衝撃と炎を真後ろに噴射して、ノエルの巨体は一発の砲弾と化した。


 あまりの加速度に、ハルバードを握る俺の手がもぎ取られそうだった。


 でも、これなら間に合う!



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