第34話 モンスター保護法案の穴


 それはいやだなぁ、と思っていると、スマホからアラート音が鳴った。


「なんだ?」


 スマホを見て、俺はぎょっとした。


 画面には、ドラゴン警報の表示が点滅していた。


「タカヤ、これはなんなのですか?」

「ドラゴン警報、山からドラゴンが街に降りてきた時の警報だ! いつもなら冒険者ギルドから緊急クエストの連絡がくるけど、春花、今はどうなっているんだ!?」


 さしもの春花も、深刻そうな顔で息を呑んだ。


「警察が時間稼ぎをしている間に自衛隊が来て対処するはずだけど、まずいよ」


 スマホの画面に新しく表示された情報に、俺も愕然とした。


「レオドレイク!? 上級ドラゴンだぞ!?」


 ライオンのタテガミのように幾重ものツノが生えていることから名づけられたソレは、Aランク冒険者数人がかりでも倒すのは困難と言われている。


「普段、対人戦の訓練しかしていない警察や自衛隊にドラゴンの相手ができんのかよ?」

「無理だろうね」


 春花は、バッサリと切って捨てた。冷徹な瞳で、彼女は俺を見据えてくる。


「モンスターの保護動物化なんて、上の連中が何も考えず国際アピールのために始めたハリボテ法案だ。準備も制度整備もまるで追いついちゃいない。警察は保護モンスター用に専用の麻酔弾の開発や睡眠魔法に特化した魔法部隊を編制するとは発表したけど、いつになるか。保護モンスターへ危害を加えるのは禁止しているけど、人的被害が出た場合はどうするのかは曖昧だしね」


「ゴミ法案が!」


 言う言葉が見つからなくて、俺は腹立ち紛れにそう吐き捨てるしかなかった。


 場内には、避難を呼びかけるアナウンスが流れる。


 客席は混乱し、そこら中で悲鳴が起こる。


 客は次々席から立ち上がり、おしあいへしあい、将棋倒しになっている場所もある。


 競技場の客席は通路が狭く、人間がスムーズに移動できるようにはなっていない。


「ん」


 ノエルが、背中から翼を生やして、上空に飛び上がった。


 スタッフが、次々関係者席に降りてきて、俺らに避難を促してくる。


「皆さんどうぞ、こちらから地下へ降りられます」

「ボクよりも他の人を先にお願い。来た」


 春花のスマホが震える。相手はノエルだった。彼女が、上空からスマホで連絡してきているのだ。


「ノエル、そっちの状況はどう?」

『15キロ先にレオドレイクが見えるのです。もう街に入っていますね。あ、ビルに火を噴いています』


 ノエルの言葉が俺にも聞こえるよう、春花はスマホをスピーカーモードにしていた。


「やっぱり、警察じゃ街への侵入は止められなかったみたいだね」


 春花が眉根を寄せると、闘技場の空を、四機の戦闘機が突っ切って行く。


 音速を超えたときに現れる白い軌跡、ベイパーをまとい、大気に白線を残しながら、戦闘機は空の向こうに消えた。


 おそらく、F15J戦闘機、通称イーグルだろう。


 ノエルが言った。


『戦闘機とレオドレイクの戦闘が始まりました。でも変なのです。戦闘機が、わざと機関砲を外しています』

「おいおい、まさか威嚇射撃で追い払えなんて通達しているんじゃないだろうな?」

「そのまさかだよ。レオドレイクは今、世界に300頭しかいない絶滅寸前種だ。一頭でも殺せば、国際社会からの批判は免れない。国が射殺許可を出すとは思えないよ」


 春花が悔しそうに歯噛みすると、ノエルが小さな悲鳴を上げた。


『戦闘機が落とされました! あ、他の戦闘機もです! 街が燃えています!』


 無理もない。

 ドラゴンは生きた災害だ。


 ゾウを見下ろす巨躯。

 鋼のウロコ。

 コンクリートを貫くパワー。

 鉄を溶かす炎の息。

 その上、空を超高速で自由自在に飛び回る。


 だからこそ、ドラゴンを討伐した冒険者は周囲の羨望を一身に集め、【ドラゴンスレイヤー】は最強の代名詞となっている。


 その中でも、レオドレイクは特に強い、上級ドラゴンだ。


 その戦闘力は現代最強のジェット戦闘機と互角以上と言われている。手心を加えれば、勝てる道理はない。


 スマホの画面に、緊急速報が表示された。



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