第26話 ステキな誤解のバカヤロウ
「これを見てください。連中の新しい動画です!」
ナナミがスマホ画面で動画を再生すると、国王派の残党たちが、不遜な態度と挑戦的な口調で告げた。
『悪逆非道なるテロリストの諸君、今、刑務所を爆破した。降伏しなければ、貴様らは今後も、正義の鉄槌を受けることになるだろう。我々を止めることはできない。何故ならば、我らこそが天と民に選ばれし、正統なる統治者なのだから! 我が名はノブスケ、今は亡き国王陛下の仇を討ち、陛下の意思を継ぐ者である!』
「ぐっ、そういう自分は爆破テロではないですか!?」
「しかしオウカ殿、奴らは何故、刑務所を爆破したのでしょうか?」
「犯罪者たちが市内に逃げ出せば、我らの嫌がらせになる。仮に爆破で誰かが死んでも、囚人なら構わない。そんなところだろうな」
寝室は、国王派にしてやられて悔しがる人と、心の中で国王派に熱いエールを送る者に分かれた。つまりは俺だ。
――必要とされるのは嬉しいけど、やっぱ、テロリストの仲間なんて御免だぜ。
オウカと結婚すれば、国王派が政権を取り返した後、俺は死刑、よくて一生刑務所だ。拉致された国民を救う能力が皆無に等しい日本政府なんてアテにできない。
ここはオウカたちとは距離を置きつつ、速やかに国王派に政権を取り戻して頂き、俺を日本に帰してもらおう。
腹の底で、色々と算段を練っていると、スマホを見ていた隊長たちの一人が声を上げた。
「おい待て、この動画の背景に窓があるぞ」
「外は明るいな、昼間に撮影したものか?」
「記念塔が見えるな」
「記念塔がこの角度、大きさから見える場所で奴らが潜伏できそうな場所と言えば……ナナミ、地図を持て!」
「はい!」
——あれれ? なんだこれ? なんだこの流れ?
ナナミが、素早く街の地図を持ってくると、オウカはテーブルの上に広げて、一点を指さした。
「連中はここら一帯の建物のどこかにいるな」
「記念塔が見えるということは間に背の高い遮蔽物がない」
「残党が集まれる以上、狭い民家はあり得ない」
「広い一階スペースが確保できるとなると……」
「このマンション、それに王室御用達の宝石店、広いガレージのあるこの大きな家も怪しいな」
「おぉ、三つまで絞れましたぞ!」
「ここが奴らの潜伏場所か!」
「ここに家宅捜索、いえ、突撃部隊を急襲させましょう!」
「うむ、奴らが逃げる前に、今すぐ行くぞ!」
オウカが頷くと、カナがハッとした。
「ま、まさかショウタ殿はここまで見越して。ツイチューブを使えば奴らもアジトでPV撮影をして、動画から国王派の残党の居場所をあぶりだせると」
え?
オウカも喉を唸らせる。
「我らの支持率を上げる方法と一緒に、国王派の残党問題を解決する方法まで考えていたとは、君の深謀遠慮ぶりには眩暈を覚えるな」
部屋中に、女子たちの感嘆の声が溢れた。
「ショウタ様、ステキ……」
「ショウタ様最高」
「ショウタは、濡れさせてくれるな」
「ショウタくんに抱かれたい」
各隊の隊長を務める女子たちは熱っぽい声で口々に俺の名を呼び、取り囲み、いつの間にか胴上げを始めた。
「我らが参謀ショウタばんざーい!」
「ショウタ様、これからも我々を導いてくださいね!」
「ショウタ様愛してるぅ!」
「ショウタ殿さえいれば我らは無敵だ!」
「わっしょいわっしょい!」
いやぁああああ! やめてぇええええ! 期待しないで買い被らないでぇ!
女子たちはみんな、羨望と尊敬の眼差しで俺を見上げながら、黄色い声を上げ続ける。
誰も俺を離す気なんてなくて、今にも全員まとめてプロポーズしてきそうな勢いだ。
日本が、日本が遠ざかるぅうううううううううううううう!
俺の絶叫は、誰にも耳にも届かなかった。
ごろん。
あ――――。
ひゅ~。
ドタビターン
ゲブォッッッ!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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本当にありがとうございました。
(申し訳ありません。全員の名前を一度に書くと、本編と感謝ページが同じ長さになってしまい、皆さんが名前を確認しくくなると思うので、本日はここまでにします。後日、あらためて感謝ページを作成します。待っててください)
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