第30話 デート(?)終了
「ぷっはぁ~、ご馳走様でしたぁ~。美味しかったぁ~。」
料理が無くなったお皿の横に、お腹をポッコリと膨らませたミカミさんが転がった。俺の両隣のドーナさんとマイネさんも満足そうな表情を浮かべている。
「いやぁ、やっぱりマイネの作った飯は美味かったよ。」
「おばさんの作った料理を全部美味しく食べられたのは、ヒイラギ君の作った料理があってこそだよぉ?メインの料理を食べた後に口の中をさっぱりさせてくれたからさぁ~。腕を見込んでお願いしてよかったよぉ。」
「そんな大したことしてないですよ。」
「いやぁ~、そんなことないよぉ。すっごくいい仕事だったよぉ。」
にこりと笑って、マイネさんは俺の頭を撫でてくれた。
「魔物ハンターになってなかったら、おばさんのお店で一緒に働いてほしかったなぁ。」
「あはは、ありがとうございます。って、あれ?俺自分が魔物ハンターだって言いましたっけ?」
「ドーナちゃんと一緒にいるし、武器も装備してるからそうかなぁ~って思っただけだよ。」
「本当によく見てますね。」
「おばさんみたいに歳を取ると、人のことが良~く見えるようになるのさぁ。」
そう言ってにこりと笑うと、マイネさんは席から立ち上がって、お皿を片付け始めた。そしてお皿を片付けて厨房から出てくるときには伝票のようなものを手に持っていた。
「今回のお会計は~誰に請求すればいいかなぁ?」
「あ、俺にお願いします。」
「はいは~い。」
渡された伝票には、料理一つ一つの値段と合計金額が書いてあった。
「本当は金貨15枚請求のところだけど~、ヒイラギ君が頑張ってくれたから金貨12枚に値引きしといたよぉ。」
「ありがとうございます。じゃあちょうどで……。」
「は~い、ありがとねぇ~。」
お会計を済ませると、ドーナさんが席を立った。それに続いて、ポッコリとお腹を膨らませているミカミさんも俺の肩まで飛んできてちょこんと座った。
「また近いうちに来るよマイネ。」
「私達もまた来るよマイネちゃん。」
「うへへぇ、美味しい食材仕入れて待ってるよぉ〜。」
マイネさんにまた来ると約束して、俺達はお店を後にした。そこから少し歩いたところで、ドーナさんが口を開いた。
「飯奢ってくれてありがと……ヒイラギ、ミカミ。」
「全然良いんですよ。これぐらいはさせてください。」
「ふっ、これで今度はアタシが奢ってあげないといけなくなったねぇ。」
「ありゃ、別に奢り合いたいわけじゃなかったんだけどね。ただ、お世話になったからお返ししたかっただけだよね、柊君?」
「そうですよドーナさん。」
「いいや、奢られっぱなしってのも、何かずっと借りを作ってるみたいで気が悪くてねぇ。」
「別にそんな複雑に考えなくていいのに〜。」
「っ、と、とにかく今度はアタシが奢る。これは決定事項だよ。」
そしてドーナさんは、半ば無理矢理に奢る奢らないという話題を切り上げると、今度は俺が料理人だったことについて触れてきた。
「……それにしても、ヒイラギが妖精の国で料理を作ってたなんて驚いたよ。あのカルパッチョって料理は本当に美味しかった。」
「美味しく食べてもらえたならよかったです。」
「ヒイラギはマイネみたいに自分で店を開こう……とかそういう考えはないのかい?」
「無いわけじゃないんですけど……ただ、今は他にやりたいことがあるので、そっちを優先したいんです。」
「なるほどねぇ。」
少し残念そうにドーナさんが納得すると、すかさずミカミさんが残念そうにしているドーナさんへ絡んでいく。
「あららら?ドーナちゃん、もしかしてヒイラギ君に胃袋まで掴まれちゃった?」
「ち、ちがっ、そういうわけじゃ……ない。」
少しムッとしながらも、恥ずかしそうにドーナさんの顔が赤くなっていく。
「んも〜、そういう反応可愛いぞドーナちゃん♪乙女だねぇ〜。」
「や、やかましいよ。」
そしてプイッとドーナさんはそっぽを向くと、こちらに背中を向ける。
「じゃ、じゃあアタシはギルドでやることがあるから、そろそろ行くよ。」
「あぇ〜……もうデート終わりかぁ。」
「だからデートじゃないっての!!」
今にも噛みつきそうな勢いで、ドーナさんはミカミさんに反論すると、横目で俺の方に視線を向けてきて、ポツリと小さな声で言った。
「…………またね。」
小さい声でそう口にすると、表情を更に赤くしながら、ものすごいスピードでドーナさんは走り去って行ってしまった。
「柊君、今の聞いたかい!?ドーナちゃん、
ミカミさんは今の去り際のドーナさんの様子に、とても興奮している。
「み、ミカミさん、拡大解釈しすぎですよ。」
「い〜や、私の目は間違ってない。そういうわけだから、明日もドーナちゃんに会いに行こうねヒイラギ君っ。」
「ちょうどこの白金貨も預けなきゃいけないし、会いに行くのは良いですけど……。」
「じゃあ決定っ!!」
興奮がなかなか冷めないミカミさんを連れて、俺は暗くなりつつある帰路についたのだった。
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